楠(くす)は、クスノキ科、クス属です。日本・本州(関東・中部以西)・四国・九州に広く分布していて、日本の照葉樹林帯の代表樹木の1つです。又常緑高木でもあります。樹高20m以上・径は90cm~1mがこの木の平均アベレージです。天然記念木指定の楠の木は、径2m~8m近い巨木が現存します。クスノキ属は、世界に40属1500種類存在し、東南アジアの暖帯から温帯にかけて分布する樹木です。
楠(くす)について
製材時にはこの木特有の樟脳(しょうのう)の香りが一面に立ち込みます。材面は白からクリーム色に褐色の筋目が現れ、大らかな杢目が魅力です。経年変化により淡褐色・茶褐色に所々に変化して行きます。年数の経た材面は、一見プロでも椨(タブ)材と見間違いする程です。産地や地域により、赤楠(アカグス)と呼ばれる良材が出材される事もあります。
材の用途
古くから建築材として多く用いられ家の内装材として、床ノ間・棚板・地板・建具・廊下板にも使われ、特殊利用として仏象彫刻材として利用されています。又材の持つ樟脳(しょうのう)を生かして、邸宅材の中でWCの一枚板として用いられる例が多くあります。又衣装箱・箱類、特殊な例として社寺仏閣内の彫刻欄間(らんま)材・木魚(もくぎょ)にも用いられています。
材の魅力
何と言っても巾の広い材が取れる事が最大の魅力です。長さ・巾サイズがあるので、耳付のカウンター材や各種テーブルに向いた材です。香りの点を欠点とするのは、時代錯誤の感が有り、古い時代はナフタリンの匂いは確かに嫌われましたが、今は”ムシューダ”防虫剤の時代、ナフタリンを知る世代は遠くなりつつ有ります。現代感覚でこの大らかな杢目を魅力に最大限に生かす事が求められます。材の加工性も高く、仕上りには光沢も有り、そのまま木地・オイル仕上りが相性が良いと言われます。
他の楠木材
東南アジアで楠材は中国・台湾・インドネシアに分布しており、中国では楠は樟と書かれ、本樟・香樟とも言われます。台湾一国でも2~3種有ると言われています。赤味を強く帯びた材は、特に本樟と呼ばれ、秀材の1つと言われます。台湾では海抜1200以下の山間部に広く分布していて、昭和40年~50年代初めまで、紅桧・台桧と共に高樹齢の大きな原木が輸入されていました。特に台湾楠は、玉杢・小豆杢・リボン杢など、多様な杢目を持った材が多いと言われます。