花梨は、マメ科です。学名はプテロ・カルプスです。産地はタイ・ビルマ(ミャンマー)・ラオス・ベトナム・マレー半島と、東南アジアに産地が集中します。同じ花梨材の仲間まで含めるとアンダマン諸島・ボルネオ・フィリピンなど、東南アジアから太平洋地域に広い範囲に生育します。タイ(プラドウ)・ビルマ(パダック)、色の黄色い材はマカ・マーカーと呼ばれ、(英)アンボイア・バールと呼ばれます。

花梨コブ・アンボイナ・バールについて

アンボイナとは、プロテ・カルプス属の約60種の総称として、エキゾチックな材を言い表します。アンボイナと言う名称は、植物学上や木材工業分野でも明確な種としては指定もありません。花梨材は各国呼び名があり、その中でもっとも有名なのが、タイ・ビルマ産の花梨コブ材です。その語源は、インドネシア東部・バンダ海の北側に浮かぶ島、セラム島の南西に位置するアンボン港から、17世紀イギリス・オランダ行きの香料・香辛料(ナツメグ、丁字、クローブ、胡椒)などの積み出し港として栄えて来ました。当然、この地域から産出される花梨材に、アンボイナの冠を付けたと言います。

※注:現在はアンボン島からアンボイナ島と表記されています。

花梨コブ一枚板

写真①:コブの辺材(白太)がまったく無い本花梨コブの秀材(欠点がまったく無く、胡麻杢・黒小豆杢が現れています。)

写真①は、コブの辺材(白太)がまったく無い本花梨コブの秀材です。欠点がまったく無く、胡麻杢・黒小豆杢が現れています。

花梨コブ・アンボイナ・バール

写真②:バール材特有の入皮等の傷が無いAクラスの花梨コブ材

写真②は、バール材特有の入皮等の傷が無いAクラスの花梨コブ材です。

花梨コブの一枚板

写真③:皮付良材アンボイナバール

花梨コブの一枚板

写真④:一般にはこの様に辺材(白太)が現れるのが普通です。

花梨コブ・アンボイナ・バール

写真⑤:「A」色彩が黄色のマーカーの花梨コブ、「B」は入皮が多いBクラスの花梨コブ

写真⑤の「A」は色彩が黄色のマーカーの花梨コブです。「B」は入皮が多いBクラスの花梨コブです。

花梨コブ・アンボイナ・バール

写真⑥:花梨の幹材の挽材

写真⑥の「A」は杢目が詰まった花梨杢材です。「B」は柾目に特有のチヂミ杢がある挽材です。

花梨の一枚板

写真⑦:黒胡麻杢・小豆杢が現れた秀材

写真⑦は黒胡麻杢・小豆杢が現れた秀材です。色・杢の細かさがAクラスの材です。

過去のアンボイナ・バール

花梨の一枚板

写真⑧:材面いっぱいに切れ目無く辺材(白太)が廻っている秀材

昭和40年代から60年代、産出国のタイを中心に、バール材は素材・テーブル材の仕掛け品として、右肩上がりに発展する日本経済を背景に、物量がとてつもない程に日本へ輸入されました。住宅産業の好調に伴い、座卓材として東京・名古屋・大阪・四国の生産メーカーが競い合う程、製作台数を誇りました。写真⑨のバール材(白太が一重に切れ目無く廻っている材)が最上とされ、人為的に皮肌を造ったり、赤い色付けをした物などは、ランク落ち材として評価されます。中には変わった形(瓢箪形)の特大テーブルや良材は、各銘木市場で常に加工部門において各賞を総嘗めした記録が残っています。

今後のアンボイナ・バール

現在、従来の座卓に加工した物や倉庫のディスストックになっている材が多いと聞きます。これだけ生活様式が激変している訳ですから、座卓からテーブル材として変化して行く事が求められています。日本人より欧米の木工家も含めて、アンボイナ・バールは特に人気や材としての評価が高く、海外のサイトでは日本で買うより数倍の価格が現実です。細かくカットして材を生かす事も大切な事ですが、この材に限っては、今有る在庫をそのままに、大きさを生かす使い方が今求められている気がします。