栗(くり)はブナ科のクリ属です。栗(くり)は落葉・中高木で比較的大径木は少ないとされ、一般には樹高15m~20m・径は50cm~60cmが平均アベレージとされ、中には径が稀に1.5mを超す材も有ります。別名、沢栗(サワグリ)・山栗(ヤマグリ)とも呼ばれ、栽培種の栗とは別けて呼びます。山間部の栗の実は小さく、古くから里で栽培される栗は実が大きいとされ、歴史的には縄文時代には既に栽培されていたと、最近の考古学分野で三内丸山遺跡などから証明する遺物が出土しました。又6世紀頃、第41代持統天皇の時代には、桑・梨と共に中国より持ち込まれた苗木等で品種改良が既に試みられていたと言います。産地は北海島(石狩・日高地方以南)・本州・四国・九州・屋久島まで、朝鮮半島南部の暖帯・温帯に分布します。北半球の中国も含め10種のクリ属が確認されています。

栗瘤一枚板

写真①:山梨県身延山系より産出された栗コブ

栗(くり)・バール(コブ)について

本材は山梨県身延山系より産出された栗のコブです。材は大きな塊として地方市場に出品された材を購入した物です。奥多摩から身延山系周辺は、ツキノワグマの生息地とリンクする地帯で、山の斜面に生えていた親木の大径木は、当時名古屋・愛知銘木(協)市場に出品されました。巾が4尺(1m20cm)の板材を取材したと聞きます。親木が伐採された跡に取り残されたコブは何世代もヒコバエ・徒長枝等が大きくなり、重なって出来た塊です。長年の”熊”の爪研ぎ跡から、虫害もあって成長続けた材と思われます。普段は幹に出来るコブは小さく、材面に大・小の虫穴が有る材が多いのですが、この材はめずらしくバール特有の杢目が詰まった材です。

栗瘤一枚板

写真②:この様な杢目(胡麻杢・玉杢・タクリ杢・チヂミ杢等)いろいろな杢目が詰まったコブ材

栗瘤一枚板

写真③:巨大な栗のコブの断面。樹齢にすると何年、山で育まれたのでしょうか?

材の用途

バールをスライスし、天然皮を生かした花台や杢の面白い部分で、ターニング材やペン製作に向いた材と言えます。

栗コブ材の面白い杢目から製作された木軸ペン

写真④:栗コブ材の面白い杢目から製作された木軸ペン

※木軸ペン:大阪・阪南市 工房「智」、武智 健氏 製作