松(マツ)は、マツ科の松属です。北海道を除いた日本全土の海岸から内陸部にかけて広く分布しています。別名、黒松・雄松・脂松(ヤニマツ)・油松(アブラマツ)・秀松(ヒデマツ)等があります。バール材としては、現在かつて伐採された松の根を掘返し用材にします。根株や地中根は、根全体に脂が廻っていて、ヤニが凝縮されている所が多く、虎目・金襴杢(きんらんもく)などがよく現れるケースが多いです。ここ10年近く、ペン製作の世界では、特に黒松の根元・根廻りは脂が多く含まれていますので、昔は石鹸の凝固剤や、戦時中は戦闘機(ゼロ戦)の航空燃料としてマツ精油が使われ、又漢方薬として種子や精油も使われます。

脂松(ヤニ)・黒松・バール(コブ)について

昭和40年代後半から、50年代に中国産の黒松の大径材が多く輸入されましたが、中国でも松脂の採取と漢方薬を取った穴や傷が多く、アタリ・ハズレの丸太が多かった事がありました。

女松の脂松

女松、日向松(宮崎県)・滑松(なめらまつ)(山口県)だけは、ヤニの有る良材は黒松と同じ様にヤニ松と呼ばれます。

バール(コブ)

黒松の地中根その物にはコブはありませんが、ヤニが全体に含み廻っている材を”根コブ”と言います。写真①は、黒松の幹に出来た珍しい幹コブです。コブは琥珀・鼈甲色(べっこういろ)をしていて、杢目の現われ方にインパクトがあります。

松のコブ

写真①:黒松の幹に出来た珍しい幹コブ

松の甚コブ

写真①の様なコブの発生は、色々な自然的要素が加わり、黒松の”木”その物自体、洞(ウロ)や目割れなどの傷を包み込む様に全体に過度の脂(ヤニ)が廻っている材(立ち枯れている材が多い)を松の甚材(じんざい)と昔から呼ばれます。座敷の床ノ間の柱・茶室・離れ部屋などに適した径寸の丸太は、めったに出会える材ではありません。写真①は珍しいレア材と言えます。戦前から普請(ふしん)道楽者・粋狂者(今で言うマニア)が争って松甚材を求めたと言います。昔は松洒落木とか松芯(ジン)・仁(ジン)柱と書かれていますが、甚(じん)の意味には松の脂が廻っていてはなはだしいの意味です。

ジュラシックパークと松脂(まつやに)

映画ジュラシックパークの1作目の様に、実際太古に生きていた昆虫類がヤニのツボに落ち込み、琥珀石になった物は高価で取引されます。昆虫類から遺伝子を取り出して恐竜を甦がえらせ、恐竜パーク建設までのストーリーです。ヤニ松の幹コブは、なかなか市場でも出品がありませんが、ヤニ松の前杢柱・四方柾柱・松甚(まつじん)洒落材と共にロマン有るバール・コブの1つです。

松のコブ

写真②:長さ45cm前後、巾10cm~15cm、厚み30mm~40mmの松甚(まつじん)コブ

松甚の柱類は、松甚洒落材・琥珀松・鼈甲松(べっこうまつ)・黄金松(おうごんまつ・こがねまつ)とも呼ばれます。

松甚(まつじん)・肌目

写真③:松甚(まつじん)・肌目