タモ(梻)は、モクセイ科(シオジ)・トネリコ属の樹木です。樹高15m~20m・径60cm~70cmが平均アベレージです。高齢木になると1m~1m20cm等の大径木も有ります。タモの別名は、日本国内では同属のトネリコ・アオダモも単にタモと呼ばれ、北日本ではニレ類をタモとも呼ばれ、南日本ではタブノキ・ヤブニッケイ・シロタモも単にタモと呼ばれています。

タモ(梻)・ヤチダモ(谷地梻)・バールについて

北海道・本州(長野県以北)・東北地方の山間部に自生します。中国東北部・アーム川流域や樺太・サハリンなど、東アジア・極東アジアの温帯から亜寒帯に至るまで広く分布します。現在世界では約70種が確認されています。日本ではアオダモ・トリノコ・シオジを含め7種が有ります。明治まではタモと非常によく似たシオジ(塩地)も同種と見なされていましたが、現在では同属種ですが、はっきり材面と明るい塩地とは区別されています。塩地は関東地方以西の西日本(四国・九州)が主な産地です。世界的にタモは単にアッシュ、(日)ジャパニーズ・アッシュと呼ばれ東アジア産の材は、マンチュリー・アッシュと呼ばれます。

タモの根廻りに付いたコブの連結部分を斜めに挽いたバール部分の杢目

写真①:タモの根廻りに付いたコブの連結部分を斜めに挽いたバール部分の杢目

タモの高樹齢、直径1mを超す材の多くは、幹芯が洞(ウロ)状になった材が多く、ここで言うバール材と呼ばれる部分は、根本に段状に重なり、タクリコブが連結した部分を指します。この部分で取材した材の判別は、どんなに良い杢目でも洞焼け(うろやけ・黒い斑点状にシミが生ずる)が僅かながら有ります。どうして根本にシワ状のタクリ杢が集中するかと言えば(杢目はどうして生まれるのか?杢目が出来る理由”木”のイロハニホヘトの文中参照)、例えば痩せた人が大きなズボンをはくと、ベルトが無ければずり落ちます。樹木もこれと同じ様に、幹芯に洞(うろ)の発生時から芯の支へを失って、長い時間を掛けて少しづつ下へ、風雨雪が加わり、根本部分に”タルミ”が発生します。ここではこのタルミ部分をバールと表現します。特にタモは芯材より、辺材(白太、皮肌)の方が水分含有率が高い事にも起因するとも言われています。

根本の”段状”のコブをいろいろな角度で挽いた材面バール材

写真②:根本の”段状”のコブをいろいろな角度で挽いた材面バール材

神話とタモの関係

北海道のアイヌ神話にもこのタモの樹木が登場します。天上界の神の使いとしてのシマフクロウ。森の中の樹高の高いタモの木に止まり、人間界に悪魔が近付かない様に下界の番人としての役割をしていると言います。タモは谷地梻と言われ、もともと谷間の谷地に生えていて、広葉樹の中では杉の様に真っすぐに伸びた姿が際立っている為、シマフクロウは、タモを選ぶと言います。

又本土では、東北地方を中心に大きい樹木は昔から神霊・信仰の対象として崇められていて、木から言霊(ことだま)を霊(たま)と言う言葉が転じて、タモとなったと言われています。

いろいろな角度の根廻りバールから取材したバールの杢目

写真③:いろいろな角度の根廻りバールから取材したバールの杢目