ワシントン条約は、絶滅の恐れのある野生動・植物の国際取引に関する条約で、輸出国と輸入国が協力して実施する事により絶滅の恐れのある野生動・植物の保護をはかる事を第一の目的としています。

1973年に国際間で取り決められ、アメリカのワシントンDCで採択された事から通称ワシントン条約と言われています。以後加盟する又は批准する国が多数参加が有り実行に移す国際機関が立ち上げた事務所がCITES(サイテス)で署名した国々は、80ヶ国に及びました。日本もこの時に参加を表明しています。現在、令和5年段階で世界196ヶ国中、184ヶ国が加盟しています。

ワシントン条約以前1964年(東京オリンピック昭和39年)には、国際自然保護連合(IUCN)が誕生し、絶滅危惧種・レッドデータリストが組み上がり、現在のサイテスのランク・附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの元になっています。IUCNで現在も各国から構成された外部委員を始め、各分野の動植物専門家を交え年度毎にランク基準を検討しています。IUCNのランク別略称などを表にまとめてみました。

※スマートフォンからアクセスの場合は表が横スライドします。

危険度ランキング 略称 IUCNでの呼称 日本環境省での呼称 概要(日本環境省)
Extinct EX 絶滅 絶滅 日本では既に絶滅したと思われる種
Extinct n the world EW 野生絶滅 野生絶滅 飼育下、栽培下、あるいは本来の生息地外で野生化した状態のみで存続している種
Critically Endangered CR 絶滅寸前 絶滅危惧ⅠA類 絶滅の危機に瀕している種
Endangered EN 絶滅危惧 絶滅危惧ⅠB類 ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高い種
Vulnerable VU 危急 絶滅危惧Ⅱ類 絶滅の危機が増大している種
Conservation Dependent CD 保全対策依存
Near Threatened NT 準絶滅危惧 準絶滅危惧 現地地点では大丈夫だが、生息地の条件の変化などにより、「絶滅危惧」に移行する可能性がある種
Least Concern LC 低危険種
Data Definicent DD データ不足 情報不足 評価するだけの情報が不足している種
Not Evaluated NE 未評価
Thereatened Local Population LP 絶滅の恐れのある地域個体群 地域的に孤立した個体群かつ絶滅の危険性が高い種

※附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ類と、IUCNとランク別に重なっていない樹木もあります。

樹木のワシントン条約の概要について

CITES(サイテス)では絶滅危惧状態により3段階に分かれています。

CITES(サイテス)の3段階

付属書Ⅰ

絶滅の恐れのある種で商業目的の国際取引禁止

付属書Ⅱ

商業目的の国際取引は出来るが、輸出国政府の許可が必要

付属書Ⅲ

動・植物の為に他の締結国の協力が必要

※例えⅡ・Ⅲ種であっても、3年に一度の国際会議で見直し検討されます。

付属書Ⅰでは、マスコミ等で話題になった象牙・ベッコウ(タイマイ・カメ)が特に厳しい事が有名で、銘木・木材ではブラジリアン・ローズウッドが挙げられています。

国際自然保護連合(IUCN)のランク付け

国際自然保護連合(IUCN)の事務局では各データを次の様にランク付けしています(国際略記号)。合わせて各ランクの代表樹木を記載しています。

  1. EN=絶滅危惧種:アレハセ、マダガスカルローズ、ホンジュラスローズ、カマティロ、紅木、パロサント、フェルナンブーコ
  2. CR=絶滅寸前種:ココボロ、チンチャン(縞紫檀)、本紫檀、小笠原桑、青黒檀
  3. VU=危急絶滅種:ブラジリアンローズウッド、インドローズ、ミヤンマーチーク、インド白檀、海南島花梨、モアビ
  4. NT=準絶滅危惧種:キューバンマホガニー、キングウッド、グラナディロ、琉球黒檀、ボせ、屋久杉、アフリカンブラックウッド
  5. LC=絶滅低種:スネークウッド、アフリカ白檀、ボコーテ、パープルハート、ブラジリアンチューリップウッド、ツーヤバール、ピンクアイボリー

現在CITES(サイテス)付属書に挙げられている樹木

付属書Ⅰ

ブラジリアン・ローズウッド・グアテマラモミ・アンデスイヌマキ・アレルセ

付属書Ⅱ

紫檀・ローズ・ブラジルボク・アフロルモシア・紅木・マカカウバ・グラナディロ・セドロ・チンチャン(縞紫檀)・メキシカンマホガニー・オオバマホガニー・中国一位・インド一位・ヒマラヤ一位・インディアンローズウッド・チューリップウッド・パロサント・リグナムバイタ・ソノケリン・フェルナンブーコ・マダガスカルローズ・マダガスカルエボニー・キングウッド・ホンジュラスローズウッド・ホンジュラスマホガニー・キューバンマホガニー・カマティロ・ゴンベイラ・ココボロ・アフリカ白檀・アフリカンブラックウッド・マレーシアンブラックウッド

手持ちの銘木・木材のお問合せ

CITES(サイテス)事務局データベース
https://www.speciesplus.net/

貿易経済協力局・貿易管理部・貿易審査課(行政機関の休日を除く)
野生動植物貿易審査室(ワシントン室)
TEL:03(3501)1723
FAX:03(3501)0997
AM10:00~PM17:00まで

アルファベット順樹種の明細

※スマートフォンからアクセスの場合は表が横スライドします。

アレルセ Patagonian Cypress ARERUSE Fitzroya cupressoides CITESⅠ
アフリカ白檀 African Sandalwood Osyris lanceolata CITESⅡ
アフリカンブラックウッド African Blackwood、African Blackwood Burl Dalbergia melanoxylon CITESⅡ
アンティーク・キューバンマホガニー Antique Cuban Mahogany Swietenia mahagoni CITESⅡ
アンティーク・ホンジュラスマホガニー Antique Honduran Mahogany Swietenia macrophylla CITESⅡ
ブビンガ Bubinga African rosewood Guibourtia spp. CITESⅡ
ボア・ド・ローズマダガスカルローズウッド Bois de Rose Dalbergia maritima CITESⅡ
ブラジリアンローズウッド Brazilian Rosewood Dalbergia nigra CITESⅠ
キュウバンマホガニー Cuban Mahogany Swietenia mahagoni CITESⅡ
カーリーメイプル Curly Maple Acer spp. CITESⅡ
ココボロ Cocobolo Dalbergia retusa CITESⅡ
カマティロ Camatillo Dalbergia congest CITESⅡ
グラナディロ Granadillo Platymiscium yucatanum CITESⅡ
ヒカゲヘゴ Flying Spider Monkey Tree Fern Cyathea lepifera CITESⅡ
ホンジュラスマホガニー Honduran Mahogany Swietenia macrophylla CITESⅡ
ホーリーウッド Palo Santo Bursera graveolens CITESⅡ
ホンジュラスローズウッド Honduras Rosewood Dalbergia stevensonii CITESⅡ
インディアンローズウッド Indian Rosewood, East Indian Rosewood, sonokeling Dalbergia latifolia CITESⅡ
インディアンローズウッド Indian Rosewood, North Indian rosewood, shisham Dalbergia sissoo CITESⅡ
インディアンローズウッド カシバール Indian Rosewood from Kashmir CITESⅡ
キングウッド Kingwood Dalbergia cearansis CITESⅡ
マダガスカルエボニー Madagascar Ebony Diospyros spp. CITESⅡ
マダガスカルローズウッド Madagascar Rosewood Dalbergia baronii CITESⅡ
ペルナンブコ Pernanbuco Paubrasilia echinata CITESⅡ
パロサント Argentine Lignum Vitae Bulnesia sarmientoi CITESⅡ
リグナムバイタ Lignum Vitae Guaiacum officinale CITESⅡ
セドロ Cedro Spanish Cedar Cedrela odorata CITESⅡ
ソノケリン Sonokeling Dalbergia latifolia CITESⅡ
縞紫檀 チンチャン Burmese Rosewood, Burma Tulipwood, SIMASITAN Dalbergia oliveri CITESⅡ
ブラジリアン・チューリップウッド Brazilian Tulipwood Dalbergia frutescens CITESⅡ
アバ Apa Afzelia spp. CITESⅡ
一位 Japanese Yew, ICHI Taxus cuspidata Sieb, et Zucc CITESⅡ

一枚板比較からの提言

日本では昔から”木”に神が宿ると言われ、その事は木霊(こだま)とか、木魂(きこん)と称し、変哲も無い大木でも感謝・畏敬の念を持って伐採し、枝・皮までも利用し、生かせる術を施し実行してきた長い歴史があります。

現在世界的に銘木・木材利用に関して、国際取引規制の中で取り沙汰されています。国内・国外から湯水の様に贅沢に使う時代はすでに終わろうとしています。

次世代の為にも植林事業ももちろん大切ですし、特に在庫しているストック材も含めて再利用に付いて各国が考えなければならない時が刻々と迫って来ている感があります。

昔から”木場の格言”で、長く原木で輸入されている時が”華(はな)”で、急に丸太の入荷が止まり、製材品しか入って来ない時は、すでに輸入国に材が無いと思へと言います。材を使った製品が入って来たら材の終わりを告げていると思へと。

ワシントン条約等で入荷が減る事はあっても増える事はありません。世界的銘木・木材の諸事情を早く知り、深く読み取り材をもっともっと有効活用し、大切にしなければならないと思います。

一枚板比較 主幹

以下のページより、貴重な杢目の種類、世界のバール材、世界の一枚板をご確認いただけます。