アレルセ(アレルシ)は、別名チリ杉、パタゴニアヒバ、新屋久杉と呼ばれています。現在チリで確認されている材は、植林材も含めて樹齢100年未満の材が多く、保護されている樹は、樹高15m~30m、径は40cm~60cmが平均アベレージです。中には径1m~1.5mの1000年以上の年輪を数える樹も残っています。1000年を越す材は、かつて流通材として輸入されていた1000~3000年クラスは稀とされています。

アレルセ(アレルシ)について

アレルセ(アレルシ)は、現在ワシントン条約CITES(サイテス)絶滅の恐れの有る動植物の種の国際取引に関する条約のCITESⅠに挙げられています。写真①は、昭和50年頃に日本に輸入されたアレルセです。樹齢2000~3000年クラスの屋久杉を彷彿させる杢目(鶉杢・雉子杢)です。写真②は、昭和50年頃に日本に輸入されたアレルセの柾目(紙を重ね畳んだ様な細い柾目)です。

昭和50年頃に輸入されたアレルセ材

写真①:昭和50年頃に輸入されたアレルセ材

昭和50年頃に輸入されたアレルセ材

写真②:昭和50年頃に輸入されたアレルセ材

アレルセの産地

チリ南西部からアルゼンチン(アンデス山脈を挟んで)分布しています。チリはペリー・ボリビアの国境から南端まで約4270kmを有し、国土は日本の約2倍の面積があります。その森林面積は、世界的に見ても1位のロシアから数えて5番目の森林面積があります。又、その気候も北部中心部まで高温乾燥です。その下の州から地中海気候、南部は冷涼で降雨量が多く、南端部はマゼラン海峡、南極に近く1年を通じて気候が不順で、強風が吹き荒れる寒冷な気候です。チリの樹木は、イヌマキ・ヒノキ属を中心に8種が主に南部に生育していて、アレルセも山脈を越え、アルゼンチンのパタゴニアにも分布しています。チリは細長い国の為、南北に16州に分かれ、表示は全てギリシア数字、数字で言うと上から4、5の州、コモンシボ・オイギシスのジャンキシエ山地、13ロス・ラゴス州の海岸山地の各標高1000m未満にアレルセは生育しています。

チリで確認されているアレルセは、樹齢100年~200年の植林二次林がほとんどで、コンギシオ国立公園には、直径60cm~1m近い巨木が残布しています。又、チリでは建築材として多く使用されていた為、アレルセの純林自体少ないと言われています。中央部から南オソルイ火山、南西部の火山帯の麗ジャンキウエ湖周辺に多くの純林が残っていると言われています。

アレルセ材

写真③:アレルセ材

杢目・柾目がある材は、細かく挽かれ、多くの木工クラフト製品の用材として使われています。

アレルセの現状

アレルセはチリ国の人口増加の歴史に伴い、主に効率の良い大径材を中心に伐採が進み、多くの住宅材・建築材・外壁材・屋根材(シエイク板)・下見板・内装材・家具材として全て使います。又、生活什品(樽)・船の帆柱や杭までも使われてきました。大量消費の結果として、山から材が消えたと言います。又、アレルセ産地の多くは、急峻な地形や湖沼に生育していて、気候的要因や都会から遠隔地であった為、一年の内のわずかな期間しか伐採が出来ない為、皆伐方式を取った為、消滅に拍車が掛かったとも言われています。チリ政府も植林事業を推進しましたが、アンデス山脈特有の火山土壌の為、太古からの痩せた土地が多い為、自然の樹木の天然更新が出来ない為と言われています。

アレルセの今後

チリ国内では最高級品の材と言われて来ました。日本に輸入されて来た時は、外観質とも屋久杉に似ていて”新屋久杉”と呼ばれていた時代もあり、又米材のレッドウッドとも良く似た気質を持っていて、あまり人気度は低く扱われていました。今日ワシントン条約、CITESⅠの附属書にブリジアンローズウッドと共に挙げられ、その貴重性が問われています。昭和50年~60年代の僅かな期間に入荷していた為、現在ストックされている特に幅広のテーブル用材が少なく、又、樹齢1000~3000年の質の良い屋久杉と同等品クラスは、少なく貴重とされています。50年前にこの材の価値を知っていたマニアの2~3人の方は巾広材を大切にストックされています。国内の市場に出て来た時は”買い”と思います。

アレルセが日本に輸入された経緯

早くは昭和30年代の熱帯林の輸入材の中にアレルセの紹介記事がありますが、今から50年前にチリにサケ・マス移植事業・養殖事業(サケマス孵化稚魚)が日本のJICA(ジャイカ)と日本の水産会社日魯漁業(株)の主導で推し進められ、幾度の失敗を克服し、現在サケ・マス・サーモンの輸入先は、ノルウェーが主要国でしたが、今はチリからの輸入が増え70%を占めていて、日本の食卓や外食産業で切っても切れない魚類になっています。日本経済が右肩上がりの時代、木材業界も中・南米より良材の輸入が大幅に増量されました。チリに駐在する日本商社が山で放置されているアレルセ材が有る事を商社仲間から聞き付け、サケマス事業と同時期、風倒木の良材の輸入が始まったと聞いています。この材とこの様な”縁”があったとは驚きですね。