唐松(からまつ)は、カラマツ属です。北半球の北部・ヒマラヤに約10種有り、日本では本樹木1種のみです。この材は冬場に葉を落とす為、落葉松(らくようまつ)とも言われています。別名、(日)天唐(てんから)・落葉松・唐松(からまつ)・赤松(あかまつ)。関東地域を中心に、地域名であかまつと言われます。他に地域名で日光松・富士松とも呼び名があります。(中)落葉松、(英)ラーチ、(独)ラチエなどの呼び名もあります。全国で赤松(あかまつ)と言うと、赤肌皮の松を言いますが、関東地域では戦前・戦後を通じて、唐松材の事を赤松(あかまつ)と言います。名付親は、数々の建築界で受賞を受けた現代数寄屋の祖、故吉田五十八(いそや)氏です。又、天唐(てんから)とは、植林・造林木の樹齢の浅い木とは対照に、樹齢の高い250年~300年生の径60cm以上の材を明治期より、旧木場地域の材木商仲間内で呼ばれていた名で”天然生唐松”の略名です。高さ25m~30m・径45cm~60cmが天唐の平均アベレージで、戦前材や群馬奥利根地域には1m近い径の巨木もあります。奥利根地域は、現在東京圏の水源として保護されています。

唐松の一枚板

写真①:垢抜けた表情の有る唐松材巾60cm

唐松(からまつ)・天唐(てんから)について

天然分布は極めて限定されていて、本州の中部温帯から海抜にして800m~2000mの山間に育成します。北限は宮城県蔵王山、南は静岡県大井川上流部千頭(せんず)・水窪(みさくぼ)・南アルプス山系、西は石川県白山までと言われています。現在、北海道・東北地方・富士・軽井沢等、植林事業が進んでいます。

材面

製材時は茶褐色からオレンジの色彩まであります。板・柾共に目が積んでいて、その端正さが魅力の1つです。一般の赤松(女松)に比べ、どことなくモダンさや、垢抜けた質感が有り、今で言う和材でありながら、バター臭さが有ります。江戸時代安政5年に歌舞伎役者の市川団十郎(4代目~7代目まで)が、現東京都江東区木場2丁目(旧島田町)に別荘を持っており、天唐を使った普請だったと今日に伝えられています。又、戦前・戦後には歌舞伎界の住宅にモダンさと現代数寄屋と天唐材料がマッチし、多くの梨園(りえん)の建物を手掛けた方が吉田五十八氏です。この材料を巡る”縁(えにし)”を感じます。

用途

現代数寄屋建築に始まり、洋風建築などの台所壁面材や玄関廻りなどの天唐材は、洋風にも不思議としっくりと根付く材です。

天唐のゆくえ

現在市場では、巾60cmまでの板が出品されます。材としては非常に魅力満載の材ですが、年輪が積んだ樹齢200年以上の出材は限りがあります。現在では東北唐松人工材、樹齢80年~120年生の材で、白太・天然皮付を生かした巾60cm前後の板材・カウンター材をお選びすると良いと思います。人工林と言えども油分が有り、加工後磨けば磨く程、艶が出て来ます。材面の仕上りは、オイル仕上げでもウレタン塗装等、何でも美しく仕上がります。

下駄箱天板・建具・敷台・丸柱と全て天唐でまとめた玄関廻り

写真②:下駄箱天板・建具・敷台・丸柱と全て天唐でまとめた玄関廻り

居間・飾り棚(拭き漆塗り)・化粧柱・巾木、天唐でまとめた居間

写真③:居間・飾り棚(拭き漆塗り)・化粧柱・巾木、天唐でまとめた居間

唐松(拭き漆塗り)・飾り棚

写真④:唐松(拭き漆塗り)・飾り棚

エッチング・ガラスを落とし込んだ居間入口ドア建具材・天唐

写真⑤:エッチング・ガラスを落とし込んだ居間入口ドア建具材・天唐

テーブル・デザイン・天唐材・応接間

写真⑥:テーブル・デザイン・天唐材・応接間