花梨(かりん)は、マメ科で学名プロカルプス・マクロカルプスです。タイではプラドゥ、イギリスではバーマ・パダックの別名があります。植物学上のカリンは、花櫚が正式名で花梨は果実が成る花梨酒を作るバラ科の植物を指します。銘木業界では永きに渡り、カリン材を花梨・花林と表記されてきました。

花梨(かりん)の一枚板

写真①:耳付きの花梨(かりん)材

花梨(かりん)について

花梨(かりん)には以下の種類があります。

①プテロカルプス・マクロカルプス

日本で本花梨として主に流通している材です。タイ中北部からラオス・ビルマに掛けて分布しています。樹高20m~30m・径70cm~1.2m近くの大径材です。

②プテロカルプス・インディクス

タイ・ビルマ南部・ジャワ・ボルネオ・フィリピン・ニューギニアの太平洋地域の広い範囲に分布します。フィリピンでは、ナラ。インドネシアでは、アンサナ・ソノケンバン。パプアニューギニアでは、ニューギニア・ローズウッドとも呼ばれます。アンボイナ材はこの地域から花梨を主体に出材する総称です。

③プテロカルプス・ダルベルギオイアス

通称アンダマン・パダックと言われる黄褐色の木地に紫色の縞を持つ材で有名です。現在、幻の花梨と言われています。樹高25m~35m・径1m~1.5mに達する大径材です。インドのベンガル湾南部に位置し、アンダマン(インド領)・ニコバル諸島(1部ビルマ領)が育成地です。イギリス時代の流刑地で木材の伐採で生活し、食料と物々交換していた時代が長く続き、マラリアとの戦いの連続で森林面積が激減し、最近ではスマトラ島沖地震の津波被害が大きかったと言います。現在木材の備積量は少ないと言います。この諸島にはセンチネル島含む複数の先住民部族が居て、外部との接触が禁止されてきました。インド領の中でも多くの島を保護区に指定している事が、”幻の花梨”と言われる所以です。

材面

各産地・地域による材面の色彩は異なりますが、日本で主に流通している花梨(①プテロカルプス・マクロカルプス)は、白太・辺材は淡黄灰色、赤身部分は通常紅褐色・桃暗褐色の材面が多いです。

材の特長

乾燥に関しては収縮率が少なく、長期乾燥にも強く干割れや大割れなどがあまり発生しません。一般的な杢目に関しては、仕上り面は良好です。逆にチヂミ杢や玉杢の材は逆目が多く発生する為、専用の刃物が必要で、入念な仕上りが必要です。オイル仕上り・ウレタン塗装にも向いた材です。色彩が赤・赤黒い材は、本花梨の本命でタイ・ラオス・ベトナムの山間部に多いと言われて来ました。

花梨の一枚板

写真②:本花梨全面にチヂミ杢のある板

材の用途

昭和40年~50年代、日本では輸入された花梨材は、そのほとんどが和室床ノ間材(床柱・落掛・床框)を主体に、内装材に多く使われ、花梨のコブのほとんどが和室の座卓として大部分が消費されました。その他家具・キャビネット・高級内装材・高級フローリングにも使われ、特殊材として和楽器、三味線の胴や棹(さお)にも使われました。

花梨コブ・アンボイナ・バール

写真⑥:写真③:花梨の幹材の挽材

写真③の「A」は杢目が詰まった花梨杢材です。「B」は柾目に特有のチヂミ杢がある挽材です。

現代の用途

現在巾の広い70cm~90cmの板巾は望めませんが、3m~4mの中巾材(60cm)前後は、店舗(バー等)のカウンターや住宅の応接間の天板などに、材の安定さと重厚さ、赤を中心とした華やかな色彩・杢目が魅力です。Aクラスの板材として人気が有ります。

花梨の一枚板を使ったダイニングテーブル

写真④:花梨の一枚板を使ったダイニングテーブル

花梨尽くしでまとめられた床ノ間材

写真⑤:花梨尽くしでまとめられた床ノ間材

化粧柱から床板(名栗加工)の花梨材でまとめられた居間

写真⑥:化粧柱から床板(名栗加工)の花梨材でまとめられた居間