桐(きり)は、ゴマノハグサ科の落葉小高木で、生長が著しく早いです。語源は”切れば早く成長す”切=キリと言います。北海道南部から本州・四国・九州・朝鮮半島に広く分布します。桐の植林・植栽は山村の畑周辺や、宅地廻りにも多く植えられ、桐畑として造成地を持つ専業農家も多いです。植栽事業として関東地方から以北の各県が有名です。岩手県(南部桐)・福島県(会津桐)・新潟県や茨木県など良材の産地と共に桐を使った”箪笥”製作地と重なります。樹高10m~15m・径40cm~50cmが平均アベレージですが、中には野生種の桐で径1m近い材もあります。

桐の一枚板

写真①:桐の皮付の小巾板

桐(きり)について

地で育った桐以外、植栽の桐は、特別な仕立方法を取ります。まず苗木を植え、翌年か一年を据え置き、根本付近の成長の良い枝木を残し、芽吹いた徒長枝は全て刈り取ります。この様な仕立方法を”台切り”と言います。1本枝を残し、間引きと同様に成長を促します。

用途

江戸時代より下駄材・箱物・楽器(琴(こと))に始まり、箪笥(タンス)・長持ち等に多く用いられ、生活用具として火鉢・衣桁(いこう)・羽子板・桐小箱・叶器にも使われます。建築材として明治期、建具・フスマ戸板・化粧内装材に使われ、特に目の詰んだ高齢木などは、床ノ間(床柱・落掛)や、皮付桐丸太などは茶室にも用いられています。特に母堂室・婦人室・書斎などの部屋は、防音を兼ねて桐の天井板材なども多く使われて来ました。

外国の桐

アメリカの東部アパラチア山系の材などは、目の詰んだ日本桐と同等で、遜色が無いと言われます。日系移民の多い南米諸国でも桐の植林事業が進んでおり、現在、中国・台湾産桐も含めて、日本の需要の多くをこれらの国の桐に頼っているのが実情です。

桐材の使い方

日本では切りの植林事業を放棄した造成地や天然野生樹の大径材が各所から出材される様になり、巾60cm×厚6cm~7cm×3m・4mの皮付丸太のカウンター材は、比較的安価であり、又、節や曲りの材なども使い方やデザインにより、面白みが有り、使い方のバラエティさに飛びます。表面をうづくり加工したり、古来日本の染技術を合わせると仕上り面は美しさを増します。

うづくり仕上りを掛けた桐板

写真②:うづくり仕上りを掛けた桐板

床柱・天井板、桐材を使ってまとめた床ノ間

写真③:床柱・天井板、桐材を使ってまとめた床ノ間

落掛・桐四方柾・床柱を使った床ノ間

写真④:落掛・桐四方柾・床柱を使った床ノ間

桐の天井材に古色仕上りを施した例

写真⑤:桐の天井材に古色仕上りを施した例

桐板に砂洗いを掛けた天井板・茶室

写真⑥:桐板に砂洗いを掛けた天井板・茶室

桐柾の網代編み天井

写真⑦:桐柾の網代編み天井

桐板に現れた玉杢(たまもく)

写真⑧:桐板に現れた玉杢(たまもく)