桑(くわ)は、クワ科のクワ属です。世界では約50種1000種を数えます。産地は北海道(千島・樺太)・本州・四国・九州・朝鮮半島・中国にも分布します。桑には、山桑(やまぐわ)・地桑(じぐわ)・里桑(さとぐわ)・島桑(しまぐわ)育成する場所によって呼び名が変わります。日本の桑は、全国でも備蓄量は少ない樹木の1つです。かつて養蚕が盛んだった明治~昭和の栽培種の桑は除きます。銘木業界で一般に言われているのは北国産より、温帯地域の方が優良材が多いと言われています。樹高は15m~20m・径は45cm~60cmが平均アベレージで、中には80cm~1m近い大径木があったと言われます。

桑(くわ)について

有名なのは、伊豆七島で特に御蔵島の金桑、西日本では島根・岡山県(作州桑)・九州(日向桑)等、全国にその名を轟かせた産地です。

材面

黄褐色を中心に暗褐色の色彩をしています。中でも玉杢・チヂミ杢・如鱗杢などが有る材は、高値を呼びます。

用途

古建築・床ノ間廻り(床柱・落掛・床框・書院材・棚板・茶道具・生活什器(手鏡・裁縫箱・茶箪笥・盆類))、細かい材は指物の象嵌材にも利用されました。

現代的な提案

天然肌の付いた板巾40cm~60cmの材でも、今日求める事が困難です。価格も高く、よく乾燥した材で多少節や傷が有る物でも利用する価値は十分です。パソコン台や応接間・小テーブルに向いた板です。材の色彩の渋みと材の持つ気品溢れる趣きがあります。特に拭き漆を施すと数年後に材面が透けて、更に趣きに深みが出て来ます。

山桑(やまぐわ)の気品ある板目と柾目

写真①:山桑(やまぐわ)の気品ある板目と柾目

写真①は、山桑(やまぐわ)の気品ある板目と柾目です。日本の名建築を支えた肥松と桑は、影の功労者です。

玉杢が有る桑材

写真②:玉杢が有る桑材

写真②は玉杢が有る桑材です。玉杢・チヂミ杢が多く有る物は、かなりの年輪を積んだ材に多いと言われます。

旧伊豆七島、御蔵島(みくらじま)産の金桑(きんぐわ)

写真③:旧伊豆七島、御蔵島(みくらじま)産の金桑(きんぐわ)

写真③は、今では”幻の桑”となった東京島嶼(とうしょ)・旧伊豆七島、御蔵島(みくらじま)産の金桑(きんぐわ)です。見る角度により、木地の中の金色が揺れ動く杢目です。江戸指物材として、島柘(つげ)材と共に御蔵の生活を支えた材でもあります。