紫鉄刀木(むらさきたがやさん)は、マメ科です。学名は、ミレティア・ペンドウラ、ラテフォリア、レウカンタです。別名、(タイ)カトーン・クラチャ・クロトン、(ビルマ)ティンウィンです。タイ・ビルマ(ミャンマー)に分布しています。樹高15m~25m・径40cm~50cmが平均アベレージで、中には60cm~70cmクラスの材もあります。
目次
紫鉄刀木(むらさきたがやさん)について
製材時は淡黄灰色ですが、空気に触れ時間を増す毎に紫色の色彩が濃くなり、紫褐色から黒褐色になります。家具・キャビネット・指物細工材・象嵌材・ステッキ材に利用されています。建築材床ノ間廻り・床柱・床框・落掛・棚板等にも利用されています。
唐木類が輸入された時期について
江戸時代の後期頃から唐木(紫檀・黒檀・鉄刀木)が唐船で輸入されていた歴史があります。紫鉄刀木が文献に出始めたのは、明治に入ってからと言われています。現在、鉄刀木・紫鉄刀木は流通していますが、現在タイ本国では、伐採・輸出禁止材となっています。昭和30年~昭和50年代にピークを迎え、今残って流通しているのは、当時輸入された材のみです。タイ・ビルマでは、鉄刀木より紫鉄刀木の育成分布本数が元々少ないと言われていて、今では貴重な材で幻の材となりつつあります。
紫鉄刀木の代替品について
西アフリカ産のウエンジと東アフリカ産のパンガ・パンガです。両材共同じマメ科の木材で大径木な為、長尺・巾広の材の取材が出来、材面は紫色から全体に黒が強い色彩まで有り、黒系の材は色抜きをしたり、加工に手間を掛ける必要がありますが、この2種類の材は、紫鉄刀木と言われても分からないぐらい色彩が似ています。店舗バーカウンターや飲食店のテーブル材にも人気があります。渋派手でいて、店舗の造作材との組み合わせで良くマッチします。紫色の色彩は後期な色と昔から言われ、自然界では紫色のはっきりした色彩は、なかなか無いと言われます。
鉄刀木と紫鉄刀木の違いについて
早くから美術工芸材として中国を通じ、陸路・海路で日本に渡って来たのは鉄刀木の方です。その後に入荷したのが紫鉄刀木です。独特の紫の色彩に指物師は魅了されたと言います。鉄刀木の方は、育成地域のタイ・ビルマは同じですが、ベトナム・カンボジア・ラオス・インドネシアと紫鉄刀木と異なり広く生育分布をしています。樹高・径も両材はほぼ同じです。成長だけは鉄刀木の方が早い為、街路樹・日陰樹として広く植林されています。
鉄刀木の名前の由来について
元々タガヤサンはフィリピン語の”タンブリアン”の言化(なまり)から起因しています。フィリピンには鉄刀木は産出しません。ボルネオ鉄刀木と呼ばれる”楠”の材種が流通が開けた海路時代に本材をタガヤサンと言葉が変化したと言われています。
なぜ鉄刀木と書いてタガヤサンと読むのかについて
鉄刀木は漢字名です。木材の杢目が剣(つるぎ)の刃(やいば)が重なって杢目が有る為と、材」の色彩が暗黒褐色をしている為、”鉄”の色彩に似ている事です。フィリピンの現地名と中国経由で日本に入荷した事から、”鉄刀木”と書いて”タガヤサン”と読む事になったと言われています。