桜(サクラ)は、バラ科のサクラ属です。桜と言えば日本の国花であり、桜に関して古来歌に始まり、文学・芸術など、日本人の生活・心情にまつわる話しが多く、サクラ属の中でも正式には山桜を指します。今では桜の代表はソメイヨシノ(園芸種・オオシマザクラとエドヒガンの雑種)が代名詞になりつつ有ります。江戸で生まれたソメイヨシノは、今日、行楽・花見にはかかせません。山桜とソメイヨシノの大きな違いは開花時です。ヤマザクラは、葉を出すと同時に花が咲き、ソメイヨシノは葉を出す前に花が咲きます。

桜の一枚板

写真①:桜(サクラ)・ヤマザクラ材

桜(サクラ)・ヤマザクラについて

樹高15m~20m・径60cm~80cm、中には1mを超す大径材も有ります。最近東北地方(材はオオヤマザクラ)の1m以上の大径材が市場に出品され業界で話題になりました。元々山間部にヤマザクラの備積量は少なく、大径材も含めて年々枯渇の一途とされつつあります。

材面

白太・辺材は灰白色、赤身の材面は褐色を主に赤・紅・黄灰褐色が混ざり、濃い緑色のくもり状の縞目を有します。梅(うめ)の材面にも似る材があります。中にはタクリ杢や玉杢が現れる材もあります。

産地

北海道を除き、本州(宮城県と新潟を結ぶライン)より以南、四国・九州(屋久島)までが生育地です。オオヤマザクラ、シロヤマザクラは、東北地方・北海道・千島・樺太・朝鮮半島にまで及び、共に山間・深山に生育します。いくつかのサクラの仲間の中でも、ヤマザクラの次にオオヤマザクラ・シロヤマザクラが業界では同等材として扱われます。

用途

粘りが有る事から、昔から浮世絵を始め、唐紙(襖柄)の版木台などに使われ、生活什器(漆器・椀)など、木地・挽き物・算盤玉・楽器(琵琶・三味線・棹)など多様に使われて来ました。

家の内装、床ノ間(柱・床框・落掛・棚板)に始まり、天上板・特に洋間の内装材や家具などにも使われ、高級邸宅・別荘には、夏に籐(とう)製品、日常使いの桜を使った椅子、テーブル材、カウンター材など洒落た洋風建築には欠かせない樹木の1つです。

軽井沢を中心に別荘用家具製作”日光彫り家具”が有名です。

現代風の使い方

現代ではヤマザクラの供給は先細りで、大径材から得られる巾広の一枚板は、”夢又夢”の状況です。出れば市場でも高値を呼びます。巾30cm~50cmまでの材のブック合わせなどを活用すべきで、少しでも桜材の渋く美しい材面を生かした提案が待ち望まれます。戦前・戦後を通して、桜材の代替供給材の一翼を担った材は、北海道産朱里桜(シュリ・ザクラ)・水目桜(ミズメ・ザクラ)・樺(カバ)類です。長尺のカウンター材は、どうしてもアフリカ・アメリカのチェリー材が現在頼みの綱となっているのが現状です。

樺の一枚板

写真②:樺(かば)材のチヂミが入った代表柄の材

写真②は、樺桜材も柔和で優しい材面が人気の材で、この材だけでジャンルを作りつつ評価を確立しています。

シュリザクラ(朱里桜)の一枚板

写真③:戦前から桜材の代用として注目された朱里桜

ミズメザクラ(水目桜)の一枚板

写真④:樺桜と共に端正は淡い色彩を持つ水目桜も人気材です。

日本の指物の世界では、桜・桑・欅・栃・松が5大銘木と言われ、現在ある意味、マニアックな板材です。