スネークウッド・蛇紋木(じゃもんぼく)は、クワ科です。別名は、(英)レターウッド、スネークウッドはイギリスの商業名です。(独)タイガー・ホルツ、(日)蛇紋木(じゃもんぼく)、(伊)アムレット、(メキシコ)ハスタ、(ガイアナ)レオパードウッド、(ブラジル)ゴメレイラ・ポルタです。不規則な黒色の斑(まだら)模様が文字に似ている為、レターウッドと欧米では呼ばれます。この材の持つ特別な杢目模様が、蛇・動物柄を彷彿させる為、スネークウッド・タイガーウッド・パンサーウッドなど国よって呼び名が異なります。中米(メキシコ南部・グアテマラ・イギリス領ホンジュラス・パナマ島)、南米(ギアナ・ガイアナ・スリナム・ブラジル北部)が産地です。

スネークウッドの一枚板

写真①:スネークウッドと呼ばれる動物柄が美しい杢目

スネークウッド・蛇紋木(じゃもんぼく)について

この木は産地・地域差が有り、蛇紋模様は全ての国々の産地で共通していますが、色彩はオレンジ系と黒色系の2通りがあります。樹高は15m~20m・径は15cm~25cmが平均アベレージで、30cm以上で長さ3m~4mの直材となると、めったに出材が無く稀で、特に高価で取引されます。日本に輸入される材は少量で、ほとんどが木の性質上、曲がりが多く、1m~2m材にカットされ、伐採地で外皮(白太皮)を取り、そのままパラフィン・ローで原木全体に塗布され輸入されます。

材は例えると”捻じり飴棒”の様な生育をしていて、伐採時にタテの干割れが多く発生しており、又船便の道中、高湿下で赤道をまたいでの日本への輸入なので、更に干割れに拍車がかかります。乾燥にも一手間・二手間を掛け、5年ぐらいは日本の気候に馴染ませます。この材は、すべての重さ(kg)で取引され、平均でK当たり3~4万円です。スネークウッドと言えばステッキを思い浮かべる程有名ですが、ステッキ店を覗くと、7桁以上の価格が並びます。サイズの広い30cm前後の材を使った美術宝石箱などは、オークションで200万円はします。小さなサイズはターニング材やペン製作に至るまで利用されます。

別名のアムレットとは?

アムレットとはラテン語圏で旅行者の護符やお守り・招福・開運を意味します。スネークウッド(蛇紋木)を初めて見た15世紀のスペイン・ポルトガルの人達は、この地の原住民が”畏敬の念を抱く木”、”神の木”とされている事を知り、本国に無事、嵐・難破の事故が無い様、船首にこの材で十字架を掲げたと言われています。

それ以来、スネークウッドをアムレットと呼ばれる様になったと言われています。母国スペインの地の巡礼時に、ホタテ貝の目印と共にこの材の杖(つえ)が護符として使われたと言います。

日本の四国巡礼でも、お遍路さんの持物に、遍路笠と共に金剛杖を大師様の化身として持ちます。偶然にも国は違ってもお守り・護符の考え方は同じかもしれませんね。

これからのスネークウッド

現在スネークウッドは、国際的なレッドリスト(樹木保護)や、ワシントン条約にはまだ挙がっていませんが、材自体・生育地の範囲が年々先細りしていて、各国小量の輸出しか無い状況です。生産国の1部を除いて、政治的・経済的に不安定さが著しく、危険すらあります。輸入業者も現地まで足を運ぶ人は少なく、現地代理人任せと聞きます。材がまだある内に、この材の持つ魅力をもっと引き出す作品造りに専念して頂きたいと思います。

スネークウッドの一枚板

写真②:良く材を見ると干割れや辺材を剥がす為に入れたチェンソー跡が見られます。

スネークウッドのステッキ

写真③:見事な杢目を利用したステッキ作品

スネークウッドから製作されたペン類

写真④:スネークウッドから製作されたペン類

※木軸ペン:三重県・伊勢市 もくもく工房 野村 収氏 製作
※ステッキ:東京新木場 ラカッポ製品