サテンとは織物生地で、絹糸の光沢がある布材です。この様な光沢の有る材面を持つ樹木の総称をサテンウッドと言います。日本ではサテンと言えば織物生地の絹繻(しゆす)をさします。女性の着物の帯の裏地によく使われます。
写真①の「A」「B」「C」は全て絹繻(しゆす)地です。「A」「B」は光沢・艶有りの色違い、「C」は艶無し地です。
目次
①ウエストインディアン・サテンウッド(ミカン科)
ウエストインディアン・サテンウッドの産地は、アメリカ(フロリダ)・西インド諸島です。別名はジャマイカ・サテンウッド、イエローサンダーです。中南米では少なくても15種有って、名前は産地・地方名を含めて100以上あると言われています。
材面
黄金色から黄色・クリーム色の材面で、製材時にはココナッツの香りがあります。ヨーロッパでは、東インド・サテンウッドが持ち込まれる前は、本材の緻密で肌目が細かく、又杢目の有る物が好まれ、ヨーロッパの古い時代家具に多くが使われて来ました。家具はもちろん、寄木細工・象嵌材にも使われます。
②イーストインディアン・サテンウッド(ミカン科)
イーストインディアン・サテンウッドの産地は、セイロン(スリランカ)・インド(中南部)です。別名はセイロン・サテンウッドです。
材面
淡黄色や黄金色が生地で美しい杢目が加わり、又強度も耐久性も持ち合わせています。小物家具・象嵌材・楽器(リコーダー)にも用いられます。
③ソフト・サテンウッド(アオギリ科・オベジエ)
ソフト・サテンウッドの産地は、西アフリカ・ギニア・カメルーン・ナイジェリアです。別名はオベジエ、アフリカン・ホワイトウッドです。樹高35m以上・径1.2m~1.5m近い大径木です。西アフリカを代表する樹木の1つです。
材面
クリーム色から白色・淡黄色が基本で、柾目には斑(サテン)が有ります。
用途
1906年に英国で植民地物産展で本材の丸太が出品され、サテンウッドとして売られましたが、人気が無くその後アフリカン・ホワイトウッドの別名で売りだしたら、この材の価格が上がり人気が出始めたという逸話が有ります。その後、樹種名のオベジエが一般名になったと言われます。材は軟材から中硬で、内装材・家具建具・合板用ツキ板に用いられます。
④コーチウッド(クノニア科)
コーチウッドの産地は、オーストラリア・東部(ニューサウス・ウエールズ)です。別名センテッド(香りが良い)、サテンウッドと呼ばれます。樹高15m~25m・径50cm~80cmです。
材面
淡褐色から桃褐色の生地色で、特に柾目取りでは、緻密な肌目に斑杢(ふもく)が立ち上がった様なサテンの光沢があります。
用途
家具・キャビネット、内装羽目板にも用いられます。
名の由来
この材には香りが有り、当時インド・オーストラリアは、イギリスの植民地でインドの貿易港(インド南西部)コーチン港のカリカットでは、オーストラリア産の香り有る材を香料積み出し港でも有った為、地域の労働者にコーチン・コーチ材とも呼ばれたと言います。
⑤サテン・シカモア(アカテツ科)
サテン・シカモアの産地は、中央アフリカ(ウガンダ・ケニア・ナイジェリア・アンゴラ)です。別名はシルバーハートです。
材面
他のサテン・ウッドより緻密さはありませんが、中小のチヂミ杢が良く現れます。
用途
建築用材から杢の良い物は、小物製作や家具造りのツキ板用材として多く使われます。
※注:サテンの冠が有りますが、日本人バイヤーが付けた名前がそのまま商業流通名となっています。
その他、西アフリカのアヤン(モビンギ)もサテン・ウッドの呼び名があります。