縮緬杢目(ちりめんもくめ)・縮杢目(ちぢみもくめ)の語源になったのは、絹地の織物がそのルーツと言われています。
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縮緬杢目(ちりめんもくめ)・縮杢目(ちぢみもくめ)
写真①②③は、すべて京・丹後(たんご)ちりめんの生地のサンプルです。すべて白生地なのですが、解りやすく解説する為に写真に色を掛けています。チリメン生地は、撚り(より)の無いタテ糸に、1メートル当たり3,000回以上、強い撚り(より)を掛けた絹糸のヨコ糸を織り込んだ絹生地で、精製(蒸す作業)をする事により、生地に凹凸がある絞(しぼ)が出てきます。このヨコ糸の撚り(より)本数を何本とは言わず、一越(ひとこし)・二越(ふたこし)と表現します。これによりチリメン生地の風合いが大きく異なります。
- 写真①は、一越(ひとこし)のヨコ糸で織り込まれた生地です。和服でよく見かける生地使いです。
- 写真②は、二越(ふたこし)のヨコ糸で織り込まれた生地です。凹凸がはっきり見えます。
- 写真③は、ヨコ糸の撚り(より)を強く掛けた風合いを鬼縮緬(おにちりめん)と呼びます。
この丹後(たんご)の生産の里は、千数百年の歴史があります。
北山杉の縮緬絞丸太(ちりめんしぼりまるた)について
同じ京都北山林業の歴史は古く、戦国時代の終わり、江戸時代の始めには、林業として確立されていたと言います。北山杉が有名です。特に丸太類は、茶室・数寄屋建築材には欠かせません。生産林業の中で、絞り丸太が偶然取れ、発見者の名前や取れた谷・地名が絞り丸太類に付けられています。
- 写真「A」は、絞りが入り込んでいるので、入絞(いりしぼ)と呼んでいます。
- 写真「B」は、絞りの山が出ているので、出絞(でしぼ)と言います(落合・雲外種)。
- 写真「C」は、絞り山が平均に出ていて、同じく出絞(でしぼ)と言います(三五・チリメン絞)。
写真「A」「B」「C」は、共に北山杉の何千本に1本の割合で偶然絞りが出現した杉材です。今日では、親木のクローンの挿し木により培養され、増産されていますが、秀材は数少なく、今でも高価貴重材です。
この偶然出材した丸太の地肌の模様が、縮緬生地の肌に似ている事から、縮緬絞丸太(ちりめんしぼりまるた)と呼ばれます。この杢目のルーツは、京都にありました。
写真⑤は、栃(トチ)の縮緬杢(ちりめんもく)です。縮緬杢(ちりめんもく)の代表は、何と言っても国産の栃(トチ)材です。巾いっぱいに上品な縮みの模様です。
写真⑥は、国産梻(たも)材の縮み模様です。チリメン生地で言えば、”鬼チリメン”ですね。
写真⑦⑧は、木工家の作品で、直径2尺(60センチメートル)の刳り盆の大作品です。作者の大胆さと杢目の向き合いが感じられる秀品です。
縮緬杢(ちりめんもく)は、国産材に限らず、以下のような外国産の樹種にも多く見られます。
花梨(タイ産)、サペリ(アフリカ)、チーク(ミャンマー)、メープル(アメリカ)、シカモア(ヨーロッパ)、ハワイアンコア(ハワイ)等があります。
よくある質問と回答
質問:縮緬(ちりめん)と業界でよく使っている縮み(ちぢみ)・漣(さざなみ)・リップルは同じ意味ですか?
回答:縮緬杢の一字を取って、縮み(チヂミ)と言うのは合っていると思います。また、リップルも漣紋(さざなみもん)と略されますが、カーリーの言葉も含めて織物の1部の呼び方であったり、髪形の形状に因む言葉が多いです。
日本名の杢目柄が、欧米の呼び方と違っているのは、ある意味事実です。扱う地域や輸入する業者が仮に付けた言語が多いと聞きます。もう少し私も調べてみないと、ハッキリ答えは出ません。いずれにせよ、日本古くから呼ばれる杢目柄・名は、情景をもっとも描写するのにふさわしく、言い当てる言語が日本語です。美しい杢目なのですから、美しく表現する心を持ち合わせて下さい。
写真⑨⑩は、如鱗杢(じょりんもく)・如鱗杢目(じょりんもくめ)でご紹介した栃(トチ)の杢目です。あえて杢目の表現をすると、漣杢目(さざなみもくめ)になります。
質問:三味線でトチ目・杢と言われる縮緬杢がありますが、なぜ”トチ”と言うのですか?
回答:私も不思議に思い、かつて浅草寿町にあった歌川三味線店(現在は廃業されています)の主人に尋ねた事がありました。栃(トチ)のチリメン杢から来ていると言われていますが、栃(トチ)は昔、橡(トチ)と書かれており、木ヘンに象、象の皮膚のシワ目から、トチ杢目と呼んだらしいと聞きました。当時30年以上前の事なので、不確かかもしれませんが、わかる方がいらっしゃれば、教えて下さると助かります。お問合せの際には、こちらのお問合せフォームよりご連絡ください。
写真⑪は、花梨材のチヂミ杢です。楽器三味線の邦楽の世界では、紅木・花梨材に現れる杢目をトチ目・杢と呼んでいます。このような杢目を持つ三味線は、驚く程の高価な価格です。
縮緬杢目・縮杢目のご紹介は以上です。続いて虎杢・虎杢目をご紹介いたします。
杢目(もくめ)の種類
木の杢目(もくめ)には様々な種類があります。図は一本の杉原木からのいろいろな杢目を木取るイメージとなっていますが、このイメージから把握できる通り、同じ樹種でも木取る場所が異なれば、違う杢目(もくめ)が現れます。杉の例となりますが、杢目を木取る区分としては、白太(辺材)(しらた)、純白・白杢(じゅんぱく・しらもく)、源平・耳白杢(げんぺい・みみじろもく)、上杢目(じょうもくめ)、笹杢・中笹杢目(ささもく・なかささもくめ)、中板目(なかいため)、中杢目(なかもくめ)、追い柾・荒柾(あらまさ)、本柾目(ほんまさめ)に分類されます。杢目(もくめ)の種類をご確認いただく前に、木目(もくめ・きめ)と杢目(もくめ)の違いについて、杢目(もくめ)と斑杢(ふもく)の違いについて、杢目はどうして生まれるのか?も合わせてご確認ください。
”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し
一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。
50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。