名栗(なぐり)・杣名栗(そまなぐり)・突鑿名栗(つきのみなぐり)加工についてご紹介いたします。

名栗(なぐり)・杣名栗(そまなぐり)・突鑿名栗(つきのみなぐり)加工について

名栗(なぐり)は、もともと板材面に”鉞(まさかり)”・”手斧(ちょうな)”・”突鑿(つきのみ)”と、人の手が加わった表面肌を賞(め)でる物です。特に現在、茶室・数寄屋建築材を始め、飲食関係(料亭・茶屋・寿司等)各店にある巾広のカウンター始め、デザイン・意匠(いしょう)の1部として、多く使われています。また、”はつり”の面白さ、デザイン性は、現代アートの世界や、指物の世界でもお盆や盛り器・机・テーブルでも見掛けます。板に野趣の味わいを加えたり、荒々しく大胆さを加味する演出をするのに、各分野で新しい試みが行なわれています。

名栗(なぐり)加工の種類

名栗(なぐり)について

名栗(なぐり)とは、有名な栗丸太の「名」「栗」部分を取って、付けられた名前です。江戸時代天保年間、京都府下北桑田郡弓削(ゆげ)村(現京都市右京区京北弓削(ゆげ)町)の杣職(そましょく)の鵜子久兵衛(うこきゅうべい)が創作したと言われています。山間の材木を扱う・鷹々峰の材木屋圓長(えんちょう)が売り広めたと言われます。手斧(ちょうな)道具を使い丸太に上手に、”はつる”大工さんは今でも多く居ますが、北山杉や雑木類の小丸太を上手に”はつる”のは、現在京都に2人しか居ないと聞きます。

杣名栗(そまなぐり)について

杣名栗(そまなぐり)とは、山仕事に従事する人々は、伐採から木出しする職人名の総称です。1尺〆(いっしゃくじめ)と言う3メートル×30センチメートル角に、丸太を4面角に大きな鉞(まさかり)で、荒々しくはつった物(半製品)が筏に組まれ、消費地に昔運ばれていました。東京では、多摩川・荒川・利根川と埼玉から群馬から江戸に運び込まれていました。現代では、荒々しく”はつられた”面を賞(め)でます。

突鑿名栗(つきのみなぐり)について

突鑿名栗(つきのみなぐり)とは、明治中頃から、人工増加に伴い都市部で住宅ブームが増大して、名栗加工の需要が増し、手製の鑿(ノミ)で波形・手節形に始まり、多面体(5角・6角・8角)と自在に手斧(ちょうな)に似せた名栗様式を言います。デザイン通りの面白い”はつり”が出来るので、現在この方式も主流になりつつありますが、この業種も軒数が無く、関西では橘(たちばな)名栗店、東京新木場のときわ名栗店と、私の知る限りでは2軒のみです。

作品例

写真①は、左から赤松・脂松・桜・アララギと材種は違う床柱に、手斧(ちょうな)による”はつり”を施し、拭き漆・春慶・溜色と漆を塗り分けた作品です。

材種が違う各名栗床柱

写真①:材種が違う各名栗床柱

写真②は、以下の通りです。

  • ①は、糸柾の栗材木地
  • ②は、手斧(ちょうな)でも土佐刀と言われる大手斧(おおちょうな)で”はつり”を入れた床框(とこかまち)
  • ③は、突鑿(つきのみ)による鹿ノ子(かのこ)名栗された框材(かまちざい)
糸柾の栗材木地、大手斧(おおちょうな)で”はつり”を入れた床框(とこかまち)、突鑿(つきのみ)による鹿ノ子(かのこ)名栗された框材(かまちざい)

写真②

”はつり”に向く材は、同じ栗でも杢目が面白い材が仕上がりには適しています。

”はつり”に向く材

写真③:”はつり”に向く材

写真④は、栗の柾板に突鑿(つきのみ)加工を側面に角度を付けた物です。リズミカルで柔しい(やさしい)表情があります。

栗の柾板に突鑿(つきのみ)加工を側面に角度を付けた物

写真④:栗の柾板に突鑿(つきのみ)加工を側面に角度を付けた物

写真⑤は、デザインしたピッチをトレースし、鹿ノ子(かのこ)仕上げにした物です。自由にデザインした物をトレース出来るのが、突鑿名栗(つきのみなぐり)の強みです。

突鑿名栗(つきのみなぐり)の鹿ノ子(かのこ)仕上り栗木地

写真⑤:突鑿名栗(つきのみなぐり)の鹿ノ子(かのこ)仕上り栗木地

写真⑥は⑤で出来た材に、荒久田汚しを茶室の向板・踏み込み板に使った例です。

荒久田汚しを茶室の向板・踏み込み板に使った例

写真⑥:荒久田汚しを茶室の向板・踏み込み板に使った例

よくある質問と回答

これはと言う名栗(なぐり)加工の作品はありますか?

建築業界の方が口を揃えて言う作品があります。京都北村美術館北村別邸(伏見)の玄関敷台(松材)に、見事な”はつり”の痕跡が有る板材です。名工匠北村捨次郎の作品です。また、数寄屋大工で有名な北村伝兵衛の作品も数々残っています。若手デザイナーさんも、これらリズミカルなハツリ跡を見た瞬間、一幅の絵画を見ているようだと驚いています。

板の仕上げの方法について

板の仕上げの方法について、浮造り(うづくり)仕上げ洗い出し加工胡粉(ごふん)汚し加工泥(どろ)汚し・荒久田(あらくだ)汚し加工名栗(なぐり)・杣名栗(そまなぐり)・突鑿名栗(つきのみなぐり)加工昔からある板の加工方法(紅茶染仕上り、鯨油仕上り、洒落材の使用)についてご紹介いたします。

板の仕上げの方法について


”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し

木喰虫一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。

50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。

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