写真①は、昭和40年頃の”木場”の正月飾りです。板上の会社のマーク、上のヒゲ文字は”寿”の字を崩した独特の書体、中段は板の長さ十二尺(3,640mm)とあります。結束の縄も輪結びにして、海老の尻尾(しっぽ)を表した結びにします。注連縄(しめなわ)を飾り、正月を迎えます。
木場の正月飾り
板書き師(いたがきし)
暮れに掛けて三河地方、産地の板書き師と呼ばれる方々が、木場に泊まり込んで得意先廻りをして、板に独特の文字を書いて廻っていました。店では、地方から働きに来ている人達が帰省しますので、暮の10日間が勝負です。各店により飾り付けが違い、店々で競いあいをしていました。紅白のテープを結束に使ったり、刷りマークに正月らしい文字を使ったり、その年の干支(えと)なども刷り込んだりと色々です。子供の頃、地元八幡様に初詣に出かける時、興味を持って見て廻りました。
写真②は、お供が挟み箱(はさみばこ)に入っている紅白の懐紙と白扇子を近所やお得意様に年始の挨拶時、現在の年始タオルと同じように配りました。店主は、紋付・袴の正装です。格の高い大問屋は三味線のお鳴り手を引き連れたそうです。
写真③は、当時各問屋の玄関先や帳場先にあったであろう江戸形式飾りの復刻です。一尋(ひとひろ)1.5メートルもあろう昆布、高値の花であった昆布の大きささえ、競ったと言われています。
写真④は、特殊な筆で板付筆(いたづけふで)と言い、各自自分で作るそうです。シュロ縄を使います。上部の二又は、”ヒゲ字”に使い、下は筆先使いです。この結束字は、江戸時代からそのままの伝統です。歌舞伎の背景に使う板に書く為、最初に東京歌舞伎座の大道具さんの所で、新しい演目時、板書きを年に1回まとめて書くそうです。材木の立て付けを使った演目時、頭に少しでもこの事がよぎって頂けたらと思います。
写真⑤は、私が若い頃、板書き師の方から教えて頂いた尺寸法の数字表です。ヒゲ字の面白い表現方法を教えて頂いたのですが、紛失してしまいました。残念です。その紙には、寿・鶴・亀・蓬来山など、貴重な書き順が記載されていました。
写真⑥は、私の前のビル時代の正月飾りです。大鋸(おか)を左右に飾る事もあります。写真⑦は、応接間の床飾りです。もちろん鏡餅も飾りますが、他の奥部屋の方へ飾っています。
写真⑧は、新木場(菱大木材)の正月飾りです。今でも木場の伝統を守る意気込みです。
木場の正月飾りのご紹介は以上です。続いて木場の初荷をご紹介いたします。
木喰虫さんの酔話
木喰虫さんの酔話について、木場の正月飾り、木場の初荷、木場の歴史、俎板(まないた)について、木のお風呂について、材木店・銘木店の符牒(ふちょう)についてとご紹介いたします。木喰虫さんの酩酊酔話(めいていすいわ)終章については、木のいろはにほへと(わかりやすい木のお話し)ページの下部にてご紹介しております。
”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し
一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。
50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。