プラスチック製の俎板(まないた)をお話しする気にはなりません。今流行(はやり)のプラスチック製の俎板(まないた)は、衛生的で手入れが簡単と言われますが、我が家では使いません。傷が付き、ほつれ、目に見えないプラスチックの粉が体内の胃に蓄積されているような気がします。今世界でゴミ問題、特にプラゴミ、ビニールゴミは、自然界では決して分解されずに、海洋生物に甚大な被害を及ぼしていて、ニュースで取り挙げられています。人間に不法投棄の鎖りの輪は、断ち切らなければなりません。幸い私は趣味で海釣りをしますので、マイ俎板(まないた)・マイ包丁と一応、小・中・大出刃、柳刃と揃っています。海釣りは、小さな沙魚(ハゼ)に始まり、大物は平目・大鯒(おおこち)までなので、俎板(まないた)は、家庭用シンク長さいっぱいの銀杏を使っています。

俎板(まないた)について

素材

俎板(まないた)について書くにあたり、うんちくを言う程詳しくないので、調べた事だけを書きます。俎板(まないた)の素材としては、戦前までは銀杏(イチョウ)・柳などが一般的だったと言われ、戦後になってから桧の俎板(まないた)を使う事が多くなってきたと言われます。一つに流通の関係と俎板(まないた)次第、裏方としていたのが客の前で見せる物の一つに変わってきたのがどうも原因らしいと言います。”木”の業種に身を置く者として、この事は、驚きを感じます。

俎板(まないた)は、元来年輪が無く、適度に柔かい材質の木の香が薫る物は避ける事が基本だそうです。香りの強い米桧(べいひ)や台湾産台桧は、俎板(まないた)として適さないという事で、まず除外されます。

柾目

俎板(まないた)は、板目か?柾目か?と言われれば、柾目がどの種類にも当てはまります。業者として柾目巾が取れない!!と頭の中で計算し、ドン引きする材があります。戦前のように、木が豊富に有った時代と今は、異なります。桧の柾目30・40・45センチメートルとなると、すぐにお金の計算に走ります。

日本人好みの俎板(まないた)の比較

日本人好みの俎板(まないた)を比較してみます。

桧派の主張

  • ①香りの好み
  • ②油分が有る
  • ③水を弾く(はじく)
  • ④変色しにくく汚れも沁み込みにくい
  • ⑤板そのものの減りが少ない

桧以外の樹種派の主張

  • ①香りがしない
  • ②適度の柔かさがある
  • ③包丁の刃先を傷めない
  • ④材に刃跡の復元力がある
  • ⑤板そのものの減りが少ない

整理すると、上記各①から⑤の条件で違うのは、香りの点以外、すべて俎板(まないた)材に求められる要望は共通していて、①の桧の香りが嫌いな人は居ません。そう考えると、何でも俎板(まないた)として使えると思いがちですが、そうとも言えないと言う方がいます。

俎板(まないた)の地域性

九州では、銀杏(いちょう)が好まれ、東北では桂(かつら)、関東では桧(ひのき)、関西京都では柳(やなぎ)が好まれ、プロの割烹料理店から、良く使われる方々までが同じ事を言う事です。

俎板(まないた)のランキング

更に面白い点として、俎板(まないた)には、ランキングが有る事です。発表されたのは京都福知山市に白木屋(しらきや)と言う俎板(まないた)一筋に研究され、全国に販売、発送を行なっているお店です。

  • 1位:最上位は柳(猫柳)
  • 2位:榧(カヤ)
  • 3位:朴(ホウ)
  • 4位:銀杏(イチョウ)
  • 5位:桧桂(ひかつら):桂材の材質で色の濃い赤味が強い木
  • 6位:桜(さくら)
  • 7位:桂(かつら)
  • 8位:木曽桧(きそひのき)
  • 9位:檜葉(ひば)
  • 10位:泥木(どろのき):泥柳(どろやなぎ)を始め東アジアに産するヤナギ科の落葉樹の事

木材屋としては以外な結果ですが、この方は、使って頂く人々から調査した結果だそうです。お膝元の日本料理を代表する京都有名料理店では、やはり柳(猫柳)が一番と答えが返ってくるそうです。年々猫柳の大径材が無く、また清流近くで育った材が秀材で、柾目となると最大で40センチメートル巾が限界だそうです。ちなみに猫柳は、吸い付く様な刃当たりがあり、腕が疲れにくい点を挙げています。

決してランキングが正しいと言っている訳ではありません。いろいろ異論もあろうかと思います。

俎板(まないた)はプロの料理人にとって、包丁と共に命とされます。納品する側もこの点と述べて来た事を最大限留意して、納めなければならないと言う点です。

納材側が知っておかなければならない事

  • ①材料は、完全乾燥している事が第一条件です。場所柄、いくら水で濡らす事が多いと言えども、不乾燥材を納めるのは、業者として御法度です。
  • ②あくまで柾目取りを最上とします。家庭用使いでは板目でも良く、板の傷などサンドペーパーを併用すれば素人でも出来ます。
  • ③樹種によっては、銀杏(イチョウ)のように雌(メス)・雄(オス)があります。雄木の方が葉節等少なく、良材とされます。もちろん赤味が基本です。
  • ④香りの有る材もランキング中にあります。桧(ひのき)・榧(カヤ)・銀杏(イチョウ)など、外材と違い嫌味な香ではありません。

俎板(まないた)のお手入れの御約束

  • ①使った後は必ず濡れ布巾、亀の子タワシを使い汚れを取り去ります。
  • ②時には熱湯をたっぷりと掛け、除菌し乾布でまんべんなく水気を落とします。
  • ③汚れが酷い場合は、漂白剤を使わず、塩を振り掛けゴシゴシ落とします。
  • ④日影干しして、裏・表、長さ方向に立て掛けます。
  • ⑤たまには短時間、両面天日干しします。

以上のようにお手入れをしておくと、長持ちし、料理造りに磨きがかかります。

よくある質問と回答

Q:中国料理に使われる俎板(まないた)は何ですか?

A:中国料理に使われる俎板(まないた)は、テレビの料理番組に出てくる円筒状の独特な形をした物です。衛生上、今ではプラスチック形成材がほとんどですが、骨付肉や鶏・豚を叩き切り分ける台で包丁も独特の形をしています。中国料理は、御存知のように北京・四川・上海・広東料理など地域性はありますが、俎板(まないた)は、中国全土に生えている目の詰まった柳の切株が基本です。北方系の槐(エンジュ)やポプラの幹切の輪切り材も使われます。日本でも最高ランクの俎板(まないた)は柳です。中国でも柳。何か文化的縁(えにし)を感じますね。

Q:俎板(まないた)の柾剥ぎ(まさはぎ)について何かありますか?

A:柾目の巾の広い要望は、素人にはわからないように、皮剥ぎ(かわはぎ)や柾目剥ぎ(まさめはぎ)をします。桧(ひのき)など、貴重な柾目は、巾40センチメートルを超える物は、現在剥ぎ合わせ(はぎあわせ)が一般的です。

桧(ひのき)のカウンター材も含めて、柾目巾60センチメートルとなると、夢の又夢の時代、同じ木から取った木表同士で巾剥ぎとします。ヤトイ実(さね)を使い、材断面はわからないように処理します。一流寿司店でも最近、俎板(まないた)に関しては、客座の前に見せる俎板(まないた)を多く取り入れている店は多いです。家庭用として木表・木裏をあわせて巾剥ぎすると、長い間使っていたら、材の収縮を起こして段差が出てきてしまいます。1本の大根を切っていたら、半分切り口が継っていたと言う笑い話があるくらいです。

Q:俎板(まないた)に関して他に何かありますか?

A:昔は小僧さん(見習生)が入社してくると、初めに花板場煮方・焼方・配膳方等、受け持ち場で、俎板(まないた)種が変わり、花板(はないた)になるまで出世により材が決まったと言います。俎板(まないた)の材の面取りや、細かい所まで納材業者に発注したと言います。包丁に関しても、同じ事があります。今は私たちの業界の縮図と同じ、料理界でもとにかく忙しい忙しい、ジックリ親方が俎板(まないた)の事、カウンターの手入れに始まり、店の造作材等、教える事は木に関して以外、学ぶ所が多いのかも知れません。寿司店なら、魚の仕入れ、下拵え(したごしらえ)から握りの実践が優先します。割烹店なら、料理造りを主とした盛付けなど、本来なら器焼物の知識など、木材なら内装造作廻りなど、深く教えられず年令からいって、良く勉強せずにそのまま巣立ってしまうケースが多いと聞きます。また総合的に教える事が出来る親方も減ったと言います。我々の業界も同じような気がします。これからは業界も、もっともっと異分野と言われていた分野であっても、学んで行かなければなりません。

今回のお話しは、俎板(まないた)されど俎板材(まないたざい)の奥深さがありますね。

俎板(まないた)についてのご紹介は以上です。続いて木喰虫さんの酔話をご紹介いたします。

木喰虫さんの酔話

木喰虫さんの酔話について、木場の正月飾り木場の初荷木場の歴史俎板(まないた)について木のお風呂についてとご紹介いたします。木喰虫さんの酩酊酔話(めいていすいわ)終章については、木のいろはにほへと(わかりやすい木のお話し)ページの下部にてご紹介しております。

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”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し

木喰虫一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。

50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。

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