手繰り杢(たくり杢・タクリ杢)についてのご紹介です。
手繰り杢(たくり杢・タクリ杢)
写真①②は、江戸時代に描かれた美人画の浮世絵です。赤い点線の丸で囲われた部分をよく見て下さい。手紙を書いている時の袖(そで)めくりしている仕種(しぐさ)、外出時、合わせの着物の裾(すそ)をたくし上げている動作の画です。
赤い点線の丸で囲われた部分、着物をたぐった時に出来るしわの重なった襞(ひだ)、このような部分を”たくりしわ”と言い、この形状が似ている樹皮及び現れる杢目を”たくり杢目”と言います。
写真③を拡大してご確認いただくと、浮世絵に描かれている着物の”ひだ”に、本当によく似ている事が分ります。
写真④⑤は、栃材のタクリ肌です。根に近い部分の拡大写真になります。陰影を強調するために、白黒写真を使っています。
写真⑥は、栃材の側(コバ)に出来た段状の”たくり肌”部分です。
写真⑦は、欅(ケヤキ)の”たくり肌”部分を挽いた杢目です。この写真の様に、段状や不規則な帯状に並んだ杢目を”たくり杢目”と呼びます。
写真⑧は、同材の”たくり肌”が浅く、根張りが少ない材では、段状の杢目がチヂミが入り、更には小玉の玉杢が現れたりもします。栗材の”たくり杢”の変化です。
写真写真⑨⑩⑪は、これぞ”手繰り杢(たくり杢・タクリ杢)”と感じる欅(ケヤキ)。以下の欅(ケヤキ)の写真を拡大してご確認ください。
手繰り杢のご紹介は以上です。続いて立涌杢・立涌杢目をご紹介いたします。
杢目(もくめ)の種類
木の杢目(もくめ)には様々な種類があります。図は一本の杉原木からのいろいろな杢目を木取るイメージとなっていますが、このイメージから把握できる通り、同じ樹種でも木取る場所が異なれば、違う杢目(もくめ)が現れます。杉の例となりますが、杢目を木取る区分としては、白太(辺材)(しらた)、純白・白杢(じゅんぱく・しらもく)、源平・耳白杢(げんぺい・みみじろもく)、上杢目(じょうもくめ)、笹杢・中笹杢目(ささもく・なかささもくめ)、中板目(なかいため)、中杢目(なかもくめ)、追い柾・荒柾(あらまさ)、本柾目(ほんまさめ)に分類されます。杢目(もくめ)の種類をご確認いただく前に、木目(もくめ・きめ)と杢目(もくめ)の違いについて、杢目(もくめ)と斑杢(ふもく)の違いについて、杢目はどうして生まれるのか?も合わせてご確認ください。
”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し
一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。
50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。