屋久杉の代表的な杢目である鶉杢目(うずらもくめ)・雉子杢目(きじもくめ)をご紹介いたします。
目次
鶉杢目(うずらもくめ)・雉子杢目(きじもくめ)
鶉杢目(うずらもくめ)
写真は、鶉杢目(うずらもくめ)と言われ、屋久杉の代表的な杢目の写真です。樹齢1000年を超す屋久杉からしか得られない杢目が緻密(ちみつ)に入り込んでいて、男性的な杢目柄と屋久杉特有の油脂分が多く含まれます。鶉杢目(うずらもくめ)は、独特な杢目柄の一つと言えます。
雉子杢目(きじもくめ)
写真は雉子杢目(きじもくめ)と言われ、これも又、屋久杉特有の杢目の一つです。日本に育成する全ての杉材と比べても本土(ほんど)の杉とは、あまりにも異なります。この杉の持つ魅力の一つと言えます。
杢目の由来
鶉杢目(うずらもくめ)・雉子杢目(きじもくめ)は、鳥類の鶉(うずら)、雉子(きじ)の胸の羽根や山鳥などの尾羽根によく似ており、江戸時代初期に既に世の中に存在し、「鶉杢目(うずらもくめ)」、「雉子杢目(きじもくめ)」と呼ばれていたと言われます。
屋久杉を挽けばこの2つの種類しか出ないかと言えば、本土の杉と同じように、板目(いため)もありますし、中杢(なかもく)も取材する事もありますが、趣はあまりにも男性的であり、テーブル、座卓などに振り分けた使い方をします。
屋久杉の歴史
かつて屋久島から出材された原木は、1000年以下の樹齢を持つ材は”小杉(こすぎ)・青杉(せいすぎ)”と言われます。小杉(こすぎ)の名の由来は、島で一番早く林道施設や住人の学校まで置かれた林相の入口部分、小杉谷地区(こすぎだにちく)の名を取ったと言われています。そして、1000年以上の大径材を屋久杉と呼びます。
江戸時代初期から屋久島では、鹿児島を代表する藩、島津藩が軍船材(ぐんせんざい)や武家屋敷の用材として早くから切り出されていました。
明治時代頃から、この油脂分と杢目の素晴らしさから、数多くの育生林は、世界自然遺産に登録され、立木の伐採は禁止されています。また、かつて山中で、根・腰高(切株部分)の地中に残っている伐根・土埋木(どまいもく)も、木材市場から2年前(2018年)に姿を消しました。たまに出材されているのは、全てかつて切り出された材や盤などが、たまに市場に出される事があります。
よくある質問と回答
質問:屋久杉の板材はどのように用いるのがベストですか?
回答:屋久杉の杢目自体に存在感があまりにも強くある為、建築としては他を圧倒してしまい、他の建築材との取り合わせは難しいと言えます。現在では盤として、テーブルや座卓にされると良いと思います。かつて3尺(90センチメートル)の大板の天井板もありましたが、現代建築にはそぐわないのが現実です。民芸風家屋の1部や天井面の1部分に上手に使う事をお勧めします。
屋久杉無傷材を座卓テーブルに使った例(※しかも拭き漆し仕上げです。)
天井の一部分に屋久杉が使われた建築例です。
質問:屋久杉にまつわる面白い話しはありますか?
回答:落語に詳しい方は御存知だと思いますが、牛ほめ(うしほめ)という落語です。既に1687年に出版された笑話本にも出てきます。あらすじは、普請(ふしん)したおじさんの所へ家を誉めに行けば、小遣いをくれると言われ、家を誉める文句を教わり、さっそく出向く、廊下は尾州(びしゅう)の桧柾(ひのきまさ)・・・畳は備後畳(びんごだたみ)・・・天井と言えば薩摩杉(屋久杉)の鶉杢目(うずらもくめ)と続き、柱の節隠しに貼ってあった秋葉神社の”火除け札”まで誉めてしまったという落ちが付きます。
この話は江戸時代五代将軍徳川綱吉の時代です。この時代に既に屋久杉の鶉杢目(うずらもくめ)の表現が有る事に驚かされます。杢目の表現は日本人独特の物です。
鶉杢目・雉子杢目のご紹介は以上です。続いて朧杢目・吟杢目をご紹介いたします。
杢目(もくめ)の種類
木の杢目(もくめ)には様々な種類があります。図は一本の杉原木からのいろいろな杢目を木取るイメージとなっていますが、このイメージから把握できる通り、同じ樹種でも木取る場所が異なれば、違う杢目(もくめ)が現れます。杉の例となりますが、杢目を木取る区分としては、白太(辺材)(しらた)、純白・白杢(じゅんぱく・しらもく)、源平・耳白杢(げんぺい・みみじろもく)、上杢目(じょうもくめ)、笹杢・中笹杢目(ささもく・なかささもくめ)、中板目(なかいため)、中杢目(なかもくめ)、追い柾・荒柾(あらまさ)、本柾目(ほんまさめ)に分類されます。杢目(もくめ)の種類をご確認いただく前に、木目(もくめ・きめ)と杢目(もくめ)の違いについて、杢目(もくめ)と斑杢(ふもく)の違いについて、杢目はどうして生まれるのか?も合わせてご確認ください。
”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し
一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。
50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。