瘤杢(こぶもく)・瘤杢目(こぶもくめ)とは、樹木の表皮が変異し、瘤状(こぶじょう)になった物を言います。瘤(こぶ)を輪切等、製材時にその材の断面に現れた豊かな表情・模様を持つ杢目が瘤杢(こぶもく)・瘤杢目(こぶもくめ)です。
瘤杢(こぶもく)・瘤杢目(こぶもくめ)
瘤(こぶ)ができる理由
瘤(こぶ)が出来る要因としては、以下が挙げられます。
- ①気象的要因(落雷・山火事・雪害・突風による幹・枝折れ)
- ②部分的要因(動物(熊の爪研ぎ)・昆虫(蜂巣)・鳥の巣(キツツキ))
- ③内部的要因(老化(洞ウロ)病気・樹木の持つ遺伝性)
- ④人為的要因(挿し木(さしぎ)・接木(つぎき)・争い・猟(弓矢・鉄砲)・戦争による砲弾)
以上のような各要因により樹皮の1部が巻き込む形で形成された物が瘤(こぶ)です。
図解による木に出来る瘤(こぶ)の説明
図解による木に出来る瘤(こぶ)の説明をします。
木に出来る瘤(こぶ)は、大きく分けて4つのタイプがあります。
- ①木の又(また)や枝部分に出来る瘤(こぶ):枝瘤(えだこぶ)
- ②樹幹の外側・内側に出来る瘤(こぶ):幹瘤(みきこぶ)
- ③樹木の根に近い根廻りに出来る瘤(こぶ):根瘤(ねこぶ)
- ④樹木の根の地中に出来る瘤(こぶ):地中瘤(ちちゅうこぶ)
上記以外として、図解に示した通り、以下の「A」、「B」があります。
- 「A」幹・根近くの表皮に出来る瘤(こぶ)状の物:玉杢(たまもく)等
- 「B」徒長枝(とちょうし)・蘖(ひこばえ):炭焼に必要な細木を繰り返し伐採して行くと瘤(こぶ)に変化します。
上記で示した①②③④の瘤(こぶ)が出来る代表的な樹種は、以下の通りとなります。
- ①瘤(こぶ)の代表樹種:銀杏(イチョウ)・楡(ニレ)・黒柿・梅などがあります。
- ②瘤(こぶ)の代表樹種:花梨(かりん・タイ産)があまりにも有名です。一般の方は、根に出来ると思いがちですが、幹や枝にも巨大な瘤(こぶ)が出現します。また、幹の内部では特殊材の香木(こうぼく)・沈香(じんこう・ベトナム産)が有名です。
- ③瘤(こぶ)の代表樹種:欅(ケヤキ)・桑(クワ)・楓(カエデ)・紅葉(もみじ)・栃(トチ)など、条件が揃うと根瘤を発生します。
- ④瘤(こぶ)の代表樹種:地中瘤の代表は、喫煙具(パイプ)に使われるブライヤーや日本では、梅(うめ)にも見られます。
「A」、「B」部分に発生する瘤(こぶ)に関連しますと、皮肌・外皮等に出来る杢肌(もくはだ)は、欅(ケヤキ)の玉杢(たまもく)・栃(トチ)の玉肌・樫(カシ)・橅(ブナ)・楢(ナラ)などの雑木類に、刈り込みによる瘤肌(こぶはだ)が発生します。
瘤杢(こぶもく)・瘤杢目(こぶもくめ)の樹種別説明
花梨(カリン)
②瘤(こぶ)の代表樹種である花梨(カリン)の瘤杢(こぶもく)です。写真「A」は、花梨(カリン)の瘤(こぶ)を輪切りにして、テーブルに加工した材です。
写真「A」の様に、ぐるりと天然肌が有り、白太が綺麗に目切れ無く廻っている物を最上とします。
写真「B」のように輪切り時1部欠損した材や、コバを人工的な天然肌を施した材は、二番手の評価になります。
写真「C」は、現地で幹瘤を落として土場に置かれた花梨(カリン)の瘤です。このような大きな瘤を抱きかかえていた花梨(カリン)の大木は想像できませんね。
小笠原桑の生育木の瘤
写真「D」は、③タイプの根瘤の輪切り材で、小笠原桑の生育木の瘤です。
山梨県身延山産栗瘤(くりこぶ)
写真「E」は、同じく③タイプの根瘤です。山梨県身延山産栗瘤(くりこぶ)です。
以下は、栗瘤(くりこぶ)の輪切り断面の写真です。正にいろいろな杢目が詰まった瘤杢目(こぶもくめ)です。
山梨県身延山産栗瘤(くりこぶ)の一枚板の詳細については以下のページでまとめています。
埼玉県秩父産楓瘤
写真「F」は、同じく③タイプの根瘤です。埼玉県秩父産楓瘤です。激しい瘤肌を持つ瘤杢目です。
クラロウォールナット瘤
写真「G」は、人為的な要因による瘤杢目(こぶもくめ)です。在来のネイティブなウォールナットにヨーロッパ、イギリス種を接木し、植物細胞の拒絶反応による瘤から得られた杢目、アメリカ西海岸カルフォルニア産のクラロウォールナットです。
樫(カシ)の瘤肌
瘤(こぶ)が発生する「A」「B」の要因による瘤肌(こぶはだ)です。幹全体が瘤状になった樫(カシ)の丸太と、肌切り取り材の2点です。
欅(ケヤキ)の玉杢
瘤(こぶ)が発生する「A」「B」条件下で有名な欅(ケヤキ)の玉杢(たまもく)です。
楓(カエデ)・紅葉(モミジ)類に出来る”花コブ”
写真は、楓(カエデ)・紅葉(モミジ)類に出来る瘤で、”花コブ”と呼ばれます。
以下は、黒柿に出来た珍しい花コブ材です。
ブライヤーの瘤
何と言っても地中瘤の代表はブライヤーです。ブライヤーは、地中海沿岸、エリカの根です。喫煙具(パイプ)に使われます。
日本では梅の地中瘤があります。
瘤杢(こぶもく)・瘤杢目(こぶもくめ)の使用例
瘤杢(こぶもく)・瘤杢目(こぶもくめ)の使用例です。雑木の肌瘤丸太をあしらったビル内玄関の天井部分です。
花梨(カリン)瘤の輪切り材を使った例です。壁面コーナー部分の三角隅棚として使った洒落た使い方です。
瘤杢・瘤杢目のご紹介は以上です。続いて胡麻目杢をご紹介いたします。
杢目(もくめ)の種類
木の杢目(もくめ)には様々な種類があります。図は一本の杉原木からのいろいろな杢目を木取るイメージとなっていますが、このイメージから把握できる通り、同じ樹種でも木取る場所が異なれば、違う杢目(もくめ)が現れます。杉の例となりますが、杢目を木取る区分としては、白太(辺材)(しらた)、純白・白杢(じゅんぱく・しらもく)、源平・耳白杢(げんぺい・みみじろもく)、上杢目(じょうもくめ)、笹杢・中笹杢目(ささもく・なかささもくめ)、中板目(なかいため)、中杢目(なかもくめ)、追い柾・荒柾(あらまさ)、本柾目(ほんまさめ)に分類されます。杢目(もくめ)の種類をご確認いただく前に、木目(もくめ・きめ)と杢目(もくめ)の違いについて、杢目(もくめ)と斑杢(ふもく)の違いについて、杢目はどうして生まれるのか?も合わせてご確認ください。
”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し
一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。
50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。