笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)のご紹介をいたします。
目次
笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)
写真①の板全体に笹の葉の形をした杢目(笹状)がある材・板を笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)と言います。
笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)の語源になったのは、笹(竹・笹)の葉の形によります。その他、笹の表現で、返し目の大柄な杢目は熊笹目(くまささめ)と呼びます。
1本の原木による製材図のイラストを見て下さい。イラストの6段目に笹杢(ささもく)・中笹杢(なかささもく)の紹介があります。板・材の巾面に、どのように笹状の杢目があるかにより、名称が異なります。
全面笹杢(ぜんめんささもく)
写真「A」は、板巾いっぱいに笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)が有る物は、全面笹杢(ぜんめんささもく)と呼びます。
中笹杢目(なかささもくめ)
写真「B」は板巾の中心に笹杢目(ささもくめ)があるので、中笹杢目(なかささもくめ)と呼びます。
半杢目(はんもくめ)
写真「C」は、写真「A」と「B」の中間の杢目巾、両脇の柾目が振れて走っているので、両脇柾目を笹杢(ささもく)に見立てて、霧島杉の半杢目と呼び、全面笹杢として昔から同じ扱いをしてきました。
総杢(そうもく)
写真「D」、「E」は、顕著(けんちょ)な笹杢を有していませんが、春日杉系や屋久杉(薩摩杉)系の杉によく見られる杢目です。板巾いっぱいに杢目があるので、単に総杢(そうもく)・全面杢(ぜんめんもく)と呼ばれます。
上杢(じょうもく)造り
写真「G」は、大切な茶道具の箱です。使用している杉材は、春日大社(奈良県)の神社木です。今では貴重な材です。この面の杢目は、笹杢(ささもく)ですが、霧島杉とは色・艶が異なり、笹杢目とは呼びません。
杉の上材(じょうざい)、木質の良い上杢(じょうもく)造りと呼ばれます。
よくある質問と回答
質問:特に笹杢(ささもく)で紹介した霧島杉(きりしますぎ)とは何ですか?
回答:霧島杉(きりしますぎ)は霧島神社(鹿児島県)、市房神宮(いちふさじんぐう)(熊本県)、狭野神社(さのじんじゃ)(宮崎県)などの神社木・参道林・神社山林から産出される高樹齢林を指して、霧島杉(きりしますぎ)と呼ばれます。現在では、霧島火山帯系山地や、阿蘇外輪山系、行者杉(ぎょうじゃすぎ)も含めて生育する杉の総称です。
質問:何故、このような特色ある杢目が出るのですか?
回答:淡い色彩は、生育している土地にあります。ほぼ九州全体は、火山灰によるシラス台地に生育しているので、白っぽいピンク色が発生すると言われています。”杢の出現”については、後で述べます。この霧島杉だけが持つ柔和で目に優しい杢目立ち、特に春日杉(写真「G」)と違い、冬目(ふゆめ)・夏目(なつめ)の境に、春目(はるめ)・秋目(あきめ)が冬目に入り込み、重なるように入り混ざって、この独特の雰囲気を兼ね揃えています。古くから、この笹杢を持った材面を”白肌の杢(もく)の京美人”とも言われます。
質問:笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)は霧島杉以外にもあるのですか?
回答:笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)系の杢目は、主に針葉樹を中心に、榧(かや)・松(まつ)・栂(つが)・桧(ひのき)などにも、たまに見られる杢目ですが、笹杢(ささもく)・笹杢目(ささもくめ)と言えば、やはり霧島杉(きりしますぎ)が筆頭です。
写真「H」、「I」は、霧島杉笹杢目を使った茶室松風楼(しょうふうろう)形の写しです。前杢床柱・落掛・琵琶棚・上下小柱全て霧島杉です。床ノ框(かまち)は栂(つが)の蟹杢(かにもく)の春慶塗(しゅんけいぬり)仕上げです。
笹杢・笹杢目のご紹介は以上です。続いて沢目杢・沢目杢目をご紹介いたします。
杢目(もくめ)の種類
木の杢目(もくめ)には様々な種類があります。図は一本の杉原木からのいろいろな杢目を木取るイメージとなっていますが、このイメージから把握できる通り、同じ樹種でも木取る場所が異なれば、違う杢目(もくめ)が現れます。杉の例となりますが、杢目を木取る区分としては、白太(辺材)(しらた)、純白・白杢(じゅんぱく・しらもく)、源平・耳白杢(げんぺい・みみじろもく)、上杢目(じょうもくめ)、笹杢・中笹杢目(ささもく・なかささもくめ)、中板目(なかいため)、中杢目(なかもくめ)、追い柾・荒柾(あらまさ)、本柾目(ほんまさめ)に分類されます。杢目(もくめ)の種類をご確認いただく前に、木目(もくめ・きめ)と杢目(もくめ)の違いについて、杢目(もくめ)と斑杢(ふもく)の違いについて、杢目はどうして生まれるのか?も合わせてご確認ください。
”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し
一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。
50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。