板柾共通の端正さ、柔かさを強調する杢目の両雄「左:柾目(まさめ)、右:中杢目(なかもくめ)」

板柾共通の端正さ、柔かさを強調する杢目の両雄
「左:柾目(まさめ)、右:中杢目(なかもくめ)」

建築や家具の世界で、共通している事があります。端正な雰囲気を人に与える杢目は、柾目と共に中杢(なかもく)・中杢目(なかもくめ)があります。

中杢目(なかもくめ)

中杢目(なかもくめ)の原木丸太からの取り方について

中杢目(なかもくめ)の原木丸太からの取り方について

中杢目(なかもくめ)の原木丸太からの取り方について

中杢を狙って原木探しを行なう際には、以下のイラスト図のように卵形(たまごがた)の丸太が理想です。そして尖(とんがり)部分が大部分を占めている物、尖(とんがり)に対して芯は、イラスト図の下方にあっても差し支えはありません。整理しますと、以下のような事が大事です。

  • ①卵(たまご)の形をした原木の小口断面
  • ②尖(とんがり)部分が有る事
  • ③取る用材により異なりますが、樹齢200年から250年前後
  • ④中杢狙いが外れても柾挽に振り変わる事ができる丸太

原木の背(せ)・腹(はら)について

原木を製材時、最初に引き割る墨掛けは、腹(はら)と背(せ)を分ける事から始まります。人間に例えると、おなか側の腹(はら)と、背骨側の背(せ)に分けられます。おなか側が腹(はら)、背骨側を背(せ)と言います。丸太の小口断面を見て、直ぐには背(せ)・腹(はら)の判断は出来ないと思いますが、原木を見つめる経験を踏むと、自然に解る様になります。

腹(はら)とは人間に当てはめると、臓器類が沢山あり、たっぷり肉があります。樹木ですと、太さがあり、ゆったりと成長して来た部位で、節などがあまりありません。背(せ)の部分は、筋肉質で硬く、肉はあまり取れません。樹木では、当て(あて)と称し、木質が硬い部分の事で、部位取りにはあまり向きません。丸太原木で全ての部位が取れ、どの部分を挽いても無傷材が取れる事が理想ですが、自然界で人間より長く生き抜いた”木”は、そう簡単には結果を導いてくれません。

諺(ことわざ)2題

  • 原木の立木(たちぎ)のページ(立木を伐採した際の原木の名称について)に述べましたが、
    元木(もとき)に勝る(まさる)木裏(きうら)無し!!
    【二番玉、三番玉より、一番は元木(もとき)一番玉原木の意】
  • 背には腹は変えられないは人間の言いぐさ。木は腹は背に変えられない!!
    【一番玉原木の方が勝っている(良い)の意】

図の「A」の線が腹(はら)と背(せ)を引き割る線です。この線を一番墨(いちばんずみ)、本墨(ほんずみ)と言います。図では①「A」または、①②の墨線です。中杢取りでは、「A」が一番墨になります。ここで、中杢盤(黄色の材部位)の木裏で、面に節や傷が出た場合、外れ(はずれ)を意味しますので、ある意味、真剣墨です。

「B」の線は木表から木裏まで、巾に対して直角に中心部に添って年輪が左右に正しく引き分けている線で、杢線(もくせん)、または杢芯線(もくしんせん)と呼びます。

図の様な墨掛けは、原木を多く経験した方は共通の認識の墨掛けになると思います。結果「C」の盤は、木表から木裏まで、挽いても挽いても中杢が取れますが、「D」の盤は木表側が中板目(なかいため)、木裏にかけてようやく中杢目となり、「C」の盤の方がランク上になります。

木挽業の(故)林以一氏の墨により美事に挽き上げた中杢目(なかもくめ)

木挽業の(故)林以一氏の墨により美事に挽き上げた中杢目(なかもくめ)

私の土場で、木挽業の(故)林以一氏の墨により美事に挽き上げた中杢目(なかもくめ)です。このような良材は、めったにありません。奈良北村又左衛門林業家の吉野杉丸太(樹齢250年)、この材が挽けた時、当時私の父親が喜び、木挽さんに酒・肴・折詰弁当・祝儀を切っていた事を思い出します。製材業で杉の丸太を多く扱ったベテラン・プロの方でも一生で”これが中杢だ”と言う杢目に出会い”当たった”方は数少ないと思います。

中杢目(なかもくめ)の杢の目巾(めはば)によるランク名について

板目(いため)と板目杢(いためもく)

①板目(いため)、②板目杢(いためもく)

中板目(なかいため)と中杢目(なかもくめ)

④中杢目(なかもくめ)、③中板目(なかいため)

  • ①は、杉の原木なり杉盤から普通に出る杢目(もくめ)です。板目(いため)と言います。または素板目(すいため)と言い、全ての樹木に当てはまるごく一般的・普通の杢目です。
  • ②は、板目より杢目巾があり、ここから板目杢(いためもく)と言い、杢目の始まりです。杢目の巾、全体のバランスが基本です。
  • ③の板目は、只の板目巾より狭いので、中板目(なかいため)と呼びます。写真を良く見て比べて下さい。板目の場合ですと、中央に目玉(めだま)が有り、返しの勢いがありません。中板杢目(なかいためもく)は、竹の返し目があり、勢いがあります。写真より少し目巾の細い物を上中板目(じょうなかいため)と呼びます。
  • ④このくらいの細い目巾を中杢目(なかもくめ)と言います。

整理しますと、板目杢(いためもく)→板目・素板目(すいため)→中板目(なかいため)→上中板目(じょうなかいため)→中杢目(なかもくめ)となります。もともと柾目(まさめ)と中杢(なかもく)は、杢(もく)両雄の表現通り、これ程中杢と同じように、ランクがあるのは広葉樹では、玉杢(たまもく)の表現になります。欅玉杢(けやきたまもく)がその代表です。

中杢(なかもく)の定義について

針目のような中杢目(なかもくめ)

A:針目のような中杢目(なかもくめ)

「A」の写真は、みごとな針目のような中杢目(なかもくめ)です。左端は、昔よく使っていた竹製の物差し(尺・寸目盛)、竹の巾は1寸(3.3センチメートル)です。

一枚の中杢目の板に、中央杢目に物差しを置き、左右が柾目(まさめ)に成る物を昔から中杢目(なかもくめ)と呼ぶ

B:一枚の中杢目の板に、中央杢目に物差しを置き、左右が柾目(まさめ)に成る物を昔から中杢目(なかもくめ)と呼ぶ

「B」のように一枚の中杢目の板に、中央杢目に物差しを置き、左右が柾目(まさめ)に成る物を昔から中杢目(なかもくめ)と呼んでいます。現在では、製材技術の向上と突板(単板)の普及(貼物)により、巾が最大1メートル巾まで可能になってきました。そこで現代的な考え方、視覚的見地から、巾(板巾)に対して、目巾が1割(10%)部分の目巾が中央に杢目としてある物(板・材)を中杢目(なかもくめ)と言います。

昔は中杢の目巾を表現するのに、人指し指分だとか指(手)何本分の太さだと、御客様の前で説明していた時代がありましたが、人前で指を使った説明はマナー違反です。

中杢目(なかもくめ)のいろいろな呼び名について

登目(のぼりめ)、竹の子(たけのこ)

①登目(のぼりめ)、竹の子(たけのこ)

受け中杢(うけなかもく)

②受け中杢(うけなかもく)

出会い中杢目(であいなかもくめ)

③出会い中杢目(であいなかもくめ)

亀の甲中杢(かめのこなかもく)、泣き別れ中杢(なきわかれなかもく)

④亀の甲中杢(かめのこなかもく)、泣き別れ中杢(なきわかれなかもく)

①は、杢目が元(もと)から末(すえ)に向って登っているので、登目(のぼりめ)と言い、竹の子(たけのこ)とも言われます。中杢目(なかもくめ)の中でも、ランクが一番上になります。

※竹の子と言われるのは、写真のように竹の節間と同じで、元の返し目が詰まっている目を言います。

※節間の返しが順序よく重なり全て竹のように上に返し目が伸びている物を一方攻(いっぽうぜめ)と呼びます。

②の中杢目(なかもくめ)は、原木の末(すえ)・元(もと)の年輪が、上手く一緒になって挽かれ出る杢目で、受け中杢(うけなかもく)と言われ、中杢の目巾が2本線で元(もと)から末(すえ)まで有る物が、中杢目の中でもランクが二番目になります。中央に受けた線状のタテ目以外、全て左右は柾目になります。

③は末(すえ)と元(もと)から同じように杢目が登ってきて、丁度板の中央部分で出会う中杢を出会い中杢目(であいなかもくめ)と呼びます。中杢目の中でもランクが三番目になります。

④は、末(すえ)と元(もと)上下に杢が逃げるように反対方向に流れている中杢は、亀の甲中杢(かめのこなかもく)とか泣き別れ中杢(なきわかれなかもく)と言い、中杢目の中でも4番目のランクになります。製材する時、曲りや膨らみ、亀の甲羅に当たる部分を製材した材に見られます。

⑤⑥とランクの続きがいろいろとありますが、中杢目(なかもくめ)の解説では割愛します。

人間の顔に見立てると、ハッキリとした目鼻立ち、キリリとした端正さが売り物の中杢目(なかもくめ)です。

キリリとした端正さが売り物の中杢目(なかもくめ)

キリリとした端正さが売り物の中杢目(なかもくめ)

中杢目(なかもくめ)の使用例について

茶室、掛け込み天井に利用された作例です。元(もと)から末(すえ)に向って一直線に駆け登る流動感を感じます。

登り目の竹の子杢、中杢目(なかもくめ)

登り目の竹の子杢、中杢目(なかもくめ)

中杢目(なかもくめ)は何も杉に限った事ではありません。以下の写真は、細い柱3寸(9センチメートル)角の大面(だいめん)に中杢(なかもく)を中央に乗せた珍しい桐中杢目柱を使った茶室例です。

細い柱3寸(9センチメートル)角の大面(だいめん)に中杢(なかもく)を中央に乗せた珍しい桐中杢目柱を使った茶室例

細い柱3寸(9センチメートル)角の大面(だいめん)に中杢(なかもく)を中央に乗せた珍しい桐中杢目柱を使った茶室例

桐の中杢は、取ろうと思ってもなかなか取材できません。しかも芯去り柱です。

中杢目のご紹介は以上です。続いて縄目杢をご紹介いたします。

杢目(もくめ)の種類

木の杢目(もくめ)には様々な種類があります。図は一本の杉原木からのいろいろな杢目を木取るイメージとなっていますが、このイメージから把握できる通り、同じ樹種でも木取る場所が異なれば、違う杢目(もくめ)が現れます。杉の例となりますが、杢目を木取る区分としては、白太(辺材)(しらた)、純白・白杢(じゅんぱく・しらもく)、源平・耳白杢(げんぺい・みみじろもく)、上杢目(じょうもくめ)、笹杢・中笹杢目(ささもく・なかささもくめ)、中板目(なかいため)、中杢目(なかもくめ)、追い柾・荒柾(あらまさ)、本柾目(ほんまさめ)に分類されます。杢目(もくめ)の種類をご確認いただく前に、木目(もくめ・きめ)と杢目(もくめ)の違いについて杢目(もくめ)と斑杢(ふもく)の違いについて杢目はどうして生まれるのか?も合わせてご確認ください。

杢目(もくめ)の種類


”木のいろはにほへと”わかりやすい木のお話し

木喰虫一枚板比較では、木を愛してやまない方々の為に、もっとわかりやすく”木のいろはにほへと”と題して、木について解説するコーナーを新設しました。

50年近くも木に携わって来た方(木喰虫さん)のお話しです。普段聞けないお話しも飛び出すかもしれません。

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