高周波プレス機は、一枚板の中に含まれる水分を木の内部から蒸発させることができる機材です。一枚板の表情が豊かで個性的ということは、それだけ杢目が複雑ということになりますが、杢目が複雑ということは、割れ、反り、ねじれが発生する可能性があるということになります。しかし、杢目が複雑な一枚板であっても高周波プレス機を利用することで、人工的に含水率を5から6パーセントまで落とすことができます。これによって、一枚板の割れ、反り、ねじれを回避することができるとされています。高周波プレス機を開発している山本ビニター株式会社さんに直接、高周波プレス機についてお話を伺ってた内容をまとめてみたいと思います。
高周波プレス機とは
一枚板製造時に利用されている高周波プレス機
以下は、高周波プレス機を開発している山本ビニター株式会社さんにお話をお伺いした内容となります。
- 一枚板の木口が割れているのは確実に含水率の問題。
- 一般的な家具は含水率が8%程度の値。
- 家具の理想の含水率は8%から13%。
- 自然乾燥（天然乾燥）で20%以下の含水率に落としてから人工乾燥を行なう必要がある。
- 人工乾燥には高周波プレスの前段階において、低温式人工乾燥（蒸気乾燥）にて2から3%含水率をまずは落とす。
- 自然乾燥、低温式人工乾燥（蒸気乾燥）まで終えた一枚板を高周波プレスに通すことによって含水率を更に落とすことができる。
- 一枚板の厚さは関係無く、高周波プレスによる作業時間は1時間ほどで済む。
- よく高周波プレスは、木の繊維を破壊すると思っている方が多いのですが、木の繊維を破壊するのでは無く、木の中に含まれている接着成分であるリグニンを柔らかくし、プレスによって木を真っ直ぐにさせている。
- 高周波プレスは、曲がった木を真っ直ぐにするものという認識の方が多いですが、もっと大切な事は外材に含まれる虫を駆除できるという点です。海外から輸入された木材の中には、虫の成虫や卵が含まれている可能性が高く、この虫が部屋の畳の上などに落ちて繁殖すると大変な事になってしまう。
- 外材に含まれる虫は、高周波プレスによって60度以上の熱を加えることで完全に駆除ができることを大学の研究機関と立証済み（駆除できるのは卵の状態のみ）。
- 販売後の一枚板が曲がってしまった場合でも高周波プレスにかければ、真っ直ぐに修正することができる。
- 高周波プレスが導入されているのは、西日本（四国）がメインで、東日本には一台も存在しない。
以上が、高周波プレスを開発している山本ビニター株式会社さんから伺ったお話です。高周波プレスを使った人工乾燥については、以下のページでまとめています。
無垢材の乾燥について
伐採されたばかりの無垢材は、飽水状態のため、自由水と結合水を大量に含んでいます。一枚板であれば短いもので3年、長いものになると10年、自然乾燥が行なわれ、飽水状態から、生材状態、繊維飽和点、気乾状態を経て全乾状態の割れや反りが発生しずらい木材へと変化します。この変化の過程が自然乾燥、天然乾燥と呼ばれるもので、古材においても自然乾燥が行なわれています。自然乾燥が行なわれた木材は、強度が高いという利点があり、全乾状態の木材は変化が起こりづらい安定した板でもあります。人工乾燥とは、一枚板のような大きな板をテーブルとして利用する場合において、強制的に人間が作り出した機械によって乾燥を行なうことで、より割れや反りが発生しにくい真っ直ぐな板を作り出す方式になります。自然乾燥（天然乾燥）と人工乾燥について、それぞれ以下にまとめていきます。
関連記事：無垢材の乾燥について一枚板購入時の基礎知識
一枚板が通常の家具と大きく違う点は、無垢材で出来ているということです。無垢材で出来ているという事は、割れ、反り、ねじれなどが発生する可能性があり、その変化も楽しめることが、通常の家具と異なる一枚板の特徴でもあります。割れたり反ったりした場合、修理してくれる家具店や一枚板専門店もありますが、もともと工務店などに対して一枚板を販売しているような材木店や銘木店は、「一枚板は、必ず変化するもの。」という前提条件のもと小売販売を行なう店舗も沢山あります。一枚板を購入するということは、割れや反りが発生するものという点を必ず理解した上で、購入する事がとても大切になってきます。自然のままの素材である無垢材で出来た一枚板は、「触れたり眺めたりすると自然のパワーを感じる。」という方もいれば、「世界にたった一つしかない完全オリジナルな家具。」という点に魅力を感じる方も多くいます。でも、そんな魅力的な一枚板を実際に購入しようとすると、「どこで購入できるのだろう？」、「どんな種類があるんだろう？」、「含水率って何？」、「一枚板テーブルの塗装の種類と違いって何？」、「割れや反りが発生しない一枚板って無いの？」、「価格が安い無垢材から自ら塗装まで仕上げられないの？」といった沢山の疑問が出てきます。一枚板を購入する側の立場で、いろいろと疑問に思った事などを自らの体験談をもとに、一枚板購入前の基礎知識としてまとめてみました。